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牛乳などを「奥から取る」人は88%!「日付が新しい方が得」と考える人が見落としがちな「処理コスト」の真実

まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」といいます。

日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2018年、農林水産省・環境省調べ)。

各家庭や個人で無理なくできる食品ロスの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球環境に優しく、食費の節約にもなる「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。

前回は、オリンピックでも問題となった「弁当」の大量廃棄が、なかなか改善されない理由について解説しました。
今回は、コロナ禍で消費量が減少している「牛乳」に着目します。

スーパーの牛乳、奥から取りますか? 手前から取りますか?

普段、スーパーで買い物をしていると、頻繁に見かけるのが、牛乳売り場で、期限の新しいものを取ろうと棚の奥に手を伸ばす光景です。

牛乳は、おいしさのめやすである「賞味期限」を表示したものと、5日以内の日持ちのものにつけられる「消費期限」表示のものがあります。
高温殺菌の牛乳は賞味期限表示低温殺菌の牛乳は消費期限表示です。

スーパーの棚でよく見る光景。奥の牛乳が抜き取られている。(撮影/井出留美)
スーパーの棚でよく見る光景。奥の牛乳が抜き取られている。(撮影/井出留美)

私が2017年頃から2021年にかけて2,689名の方にアンケートをとったところ、「買い物のとき、奥に手を伸ばして日付の新しいものを取ったことがある」と答えた人は88%に及びました。同じ値段だったら少しでも日付の新しいものを取るのは「消費者の当然の権利」と言う人も多くいます。

しかし、みんなが日付の新しいものを選ぶと、その結果、期限の迫った、あるいは期限が切れた「売れ残り」が発生することになります。
処理コストを負担するのは、店だけではありません。私たちが市区町村に納めた税金を使い、家庭ごみと一緒に焼却処分する自治体がほとんどです。自治体によってその処理コストは異なりますが、東京都世田谷区の場合、1kgあたり59円。1kgは、ほぼ牛乳1リットルパックの重さに相当します。

期限内に使い切ることができるならば、できるだけ商品棚の手前から取る「てまえどり」を意識することで、自分が納めた貴重な税金を、食品を捨てるために費やすことなく、福祉や医療、教育にまわすことができるのです。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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