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「畑の都合に合わせてメニューを決める」ターブルオギノ・荻野伸也シェフの“ロスゼロ”への挑戦

まだ食べられるのに、捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」といいます。

日本では1年間に約600万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる276万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2018年、農林水産省・環境省調べ)。

各家庭や個人で無理なくできる食品ロスの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
地球環境に優しく、食費の節約にもなる「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。

前回は、捨てられやすい食品の筆頭格「パン」について紹介しました。
今回テーマ食品は、家庭でもっとも捨てられやすい「野菜」。
農家から規格外の野菜を仕入れるフレンチデリ「ターブルオギノ」荻野伸也シェフの活動からロスゼロ術を学びます。

コロナ禍で家庭の食品ロスは減少傾向に

「家で捨てたことのある食品」というと何が思い浮かびますか?
野菜室でミイラのように乾いたショウガ、とりあえず冷凍したけど食べなかったお肉……。

家庭でもっとも捨てられやすい食品は、「野菜」です。

冷蔵庫の奥にしなびた野菜、眠っていませんか?
冷蔵庫の奥にしなびた野菜、眠っていませんか?

農林水産省が行った食品ロス統計調査(平成26年度)の「主な食品別の食品ロス率」を見ると、「野菜類」が8.8%と最も高く、ついで「果実類」が8.6%、「魚介類」が5.8%となっています。

ハウス食品グループ本社が2020年に行った調査でも、「捨ててしまいがちな食品・食材の割合」で圧倒的に多かったのは野菜類(57.3%)でした。

買っておいたけど袋のまま入れておいたら茶色い汁が出てきたもやし、ヘタってしまったニラ、かびが生えてしまったカットかぼちゃ……。
野菜のロスには、身に覚えがある人が多いのではないでしょうか。

各家庭で食材を無駄にしない基本の一つは、「家にある食材で料理する」ことです。
実は、2020年のコロナ禍で、イギリスやイタリア、カナダやアイルランド、オーストラリアなどでは、家庭の食品ロスが減ったというアンケートの調査結果が出ています。
コロナ禍でロックダウンになった国では、買い物になかなか行きづらくなったので、家に「あるものでまかなう」ようになったからです。
日本でも、60代の女性会社員が「買い物に行けなくなったので、家にある野菜を徹底的に使い切るようにしたら、食費が3割も安くなった」と新聞に投書していました。

もう一つは「ないものだけ買う」ということ。
家の冷蔵庫や食品庫にある食材をチェックして、ないものだけ買い物リストやメモを作ってから買い物に行くと、重複して買ってしまったり、安売りにつられて買ってしまったりということがなくなります。

とはいえ、それを日常生活の中で完璧に実践するのは、なかなか難しいものですよね。
正直にいうと、長年食品ロスの専門家として活動している私でも、野菜をはじめとする生鮮食品の管理は、いまだに試行錯誤しています。
捨てるたびに「あー、やっちゃった」と罪悪感にさいなまれるものの、慌ただしい日々を過ごしているうちにまた冷蔵庫にしなびた野菜が……ということも。

ところが実は、「あるものでまかなう」ことを、飲食店で実践し、経営的にも成功を収めている人がいるのです。
フレンチデリ「ターブルオギノ」を運営する、シェフの荻野伸也さんです。

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井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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