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規格外、珍しい、流通の都合…理不尽な理由で捨てられる「未利用魚」。コロナ禍で注目を集める活用法とは?

消費者に届く前に多くの魚が捨てられている

「魚治」のようなお店に積極的に通って美味しい魚料理を味わいたいところですが、残念ながら最近は外食がしづらい状況になってしまいました。
家にいながら、未利用魚を活用するにはどうしたらいのでしょう。
そんなときに便利で、今注目を集めているのが、大地を守る会の「もったいナイシリーズ」です。この通販サイトの魚コーナーを見てみると、身割れしてしまった生のホタテや、かつおの刺身を作る時に出る切り落とし、魚を獲る際に網で傷がついてしまったシャケ、葉の色や形にばらつきのあるわかめなど、未利用魚介類の加工品がお得な値段で売られています。

結局、流通に便利さや効率を求めたことで、捨てられる魚は昔よりも増えたといえるかもしれません。効率を求める裏側で損していることも多いのではないでしょうか。
冒頭で述べた魚屋の件もそうです。
『日本の食と農 危機の本質』(神門善久著、NTT出版)には「かつての八百屋や魚屋は、単に食材を売る場所ではなかった。食材の産地や調理の仕方はもちろん、献立の相談にいたるまで、濃密な情報交換があった。消費者自身が、セルフサービスの気楽さ利便さを求めて、対面販売の八百屋や魚屋から去っていったのである」とあります。
現代社会は、便利さや効率と引き換えに、大切なものを失ってしまったことは否めません。

「食品ロスに関するアンケート調査(第三回)」の最新結果(ハウス食品グループ本社のホームページより)
「食品ロスに関するアンケート調査(第三回)」の最新結果(ハウス食品グループ本社のホームページより)

ハウス食品本社の「食品ロスに関するアンケート調査」(2021年1月)では、家庭で「最近捨てた食品」の上位10位に魚は入っておらず、「期限が近づいて焦った食品」の9位に魚介類が入っています。
こうしてみると、他の食品に比べてロスは少なめのように感じるかもしれませんが、現実には、消費者に届く手前の段階で、食べられる魚が捨てられてしまっているのです。それも、規格外や漁のメインターゲットではなかったといった理不尽な理由で。
こうした現状にはあまり目が向けられていないのではないでしょうか。
ただ見えるものだけを見ているのではなく、目に見えない裏側を見ようとすること、知ろうとすることが、わたしたちに求められるのではないかと感じます。

【捨てないコツ】
・魚屋で魚のプロにおすすめの料理法や保存法を聞く。
・「未利用魚」を活かす活動をしている店や通販を利用する。
・店頭や家庭に届く前に捨てられている食材も多いことに目を向ける。

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新刊紹介

井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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