2022.1.8
【中村憲剛×福田紀彦川崎市長対談 前編】川崎フロンターレの活躍で“シビックプライド”を持つことができた
市の水道100周年記念もフロンターレに盛り上げてもらった
中村
フロンターレと川崎市がいろいろと一緒にイベントや企画をやらせてもらってきたなかで、福田市長の思い出に残っているものってありますか?
福田
ムチャクチャありますよ(笑)。でも特にと言われたら宇宙との生交信ですかね(注:2016年8月16日、試合開催日ではない等々力陸上競技場で国際宇宙ステーションと回線をつなぎ、大西卓哉飛行士と約20分間交信。川崎市の教育活動という名目があったことでJAXAとNASAの協力を得ることができた)。最初にその話を聞いたときは規模が大きすぎて「フロンターレは何を言っちゃっているんだろう」と(笑)。
中村
そりゃそうだ(笑)。僕も最初にその話を聞いたときに「何言ってるの?」ってスタッフに言った記憶ありますもん(笑)。
福田
でも、素晴らしいと思いましたよ。フロンターレが川崎市民と宇宙をつなげてくれたわけですから。ほかにも(東日本大震災の被災地である)陸前高田市とのつながりもそうです。試合のイベントとして毎年、「陸前高田ランド」が開催されて、物販があったり、お餅投げがあったり……。ブームじゃ終わらせないという思いも伝わってきて、つながりを作り続けてくれるのがフロンターレの良さなのかなって。川崎市民ってもともとウェットな人が多いと感じるんです。そこはフロンターレと共通しているから、市民も一緒になってやり続けられるんじゃないかと感じますね。慈善団体がやるならわかるんですけど、サッカークラブがそこをやるっていうところがやっぱり素晴らしくて。
中村
確かになにかとなにかの手をつなげるのがフロンターレは上手かもしれないですよね。だって、みんなでやったほうが何をやるにしても広がるし、(活動が)大きくなるじゃないですか。ほかのことでもみんなで一緒にやることで問題が解決する場合だってあると思うんです。昔はフロンターレから行政に相談する形ばかりでしたけど、段々と市のほうからアイデアをいただくことも出てきて。フロンターレをうまく活用してもらうようになれば、それこそ望むひとつの形というか。市の問題に対して僕らも一緒になって取り組めるわけですからね。
福田
最近で言えば、(川崎市の)水道給水開始100周年を記念したユニフォームでホーム開催の3試合を戦っていただいたのもありがたかったですね。
中村
あのユニフォーム、即完売だったみたいです。
福田
普通は、市の水道100周年と言っても、なかなか気に留めてもらえないと思うんです。だけどああやってフロンターレが一緒にやってくれたことで、ものすごく魅力的なものになった。フロンターレのフィルターを通すとこうなるっていうのがよく理解できる出来事だったと思います。
中村
そこに関していえば、一緒に歩調を合わせてくれていろんなことを理解してくれた川崎市に対して少しでも恩返しをしていきたいという思いがクラブにあるからだと思います。水道給水開始100周年も心をこめてしっかりセレブレーションしたい、と。やっぱり川崎市のためにという思いがフロンターレとして強いので。失礼かもしれないですけど、運命共同体みたいな関係だと僕は思っています。
福田
その言葉、うれしいですね。
中村
フロンターレによって川崎市自体の印象にも影響を及ぼすことだってあるわけじゃないですか。少なくとも僕は選手としてずっと運命共同体だと思ってやってきたつもりです。