2021.12.18
【中村憲剛×横田真人対談 後編】 人を見て選択肢をどれだけ与えられるか? 理想とするコーチング論
横田さんが設立した「TWOLAPS TRACK CLUB」には東京オリンピック陸上女子10000mに出場した新谷仁美選手(積水化学工業)や1500mに出場した卜部蘭選手(積水化学工業)らが所属。社会との結びつきやセカンドキャリアに対する関心など、多角的、長期的な視点から選手それぞれと信頼関係を深めながら「結果主義」をモットーとする思考に、JFA(日本サッカー協会)ロールモデルコーチを務め、「KENGO Academy」を主宰する中村憲剛さんも共鳴しながら対談は進んでいきます。
(取材・構成/二宮寿朗 撮影/熊谷 貫)
(前編より続く)
競技以外に視野を広げることで息の長い選手になる
中村
自分の経験で言わせてもらうと、プレーだけやっているとサッカーの部分でしか成長できない。でも川崎フロンターレにいたことで地域貢献活動ができたり、ファン、サポーターを意識した活動ができたことで視野が広がり、結果的に自分のパフォーマンスに還元されプラスになったという実感を持てました。だから横田さんが中距離の大会を開催して選手のみなさんがいろいろと企画を考え、多くの方を巻き込んでコミュニケーションを取りながら形にしていくというのはすごくいいことだと思うんですよね。
横田
うちに集まる選手たちは所属先が企業だったり、大学だったりとバラバラなんですね。コーチング料を選手からいただいているうえに、大会のディレクターという労働をやってもらっています(笑)。
中村
いや、でもそれは最終的に選手のプラスになることですから(笑)。
横田
現役のときって、地域の陸上競技協会とのパイプが意外にないので、たとえば現役を引退して自分たちで考えた大会をやってみたいとなっても、やり方がわからない。だから、今からパイプを持っておくことでコミュニケーションが生まれ、“将来こういうイベントを一緒にやりませんか”って提案しやすくなりますよね。現役時代につくったほうがいい財産を、つくれていない選手が多いんです。大会を開催する意味は、選手のためでもある。それに憲剛さんが言ったように、パフォーマンスにもプラスの影響をもたらすと僕も考えています。
中村
選手を長い目で見ているんだなって本当に感じますよ。
横田
ありがとうございます。一般的に、こういうディレクターみたいなことを指導者はやらせないと思うんです。疲れるだけだよって。確かに目の前にオリンピックとか大事なレースがあるんだったら僕もやらせないですよ。でも長い目で見たら、視野を広げてもらうことは絶対にプラスになるし、ひいては憲剛さんのように息の長いアスリートになる。競技じゃないところもいっぱい経験してほしいんですよね。