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暴風雨とねずみ男

27年ぶりの引っ越しにともなう不要品整理。溜まりに溜まったものを処分し厳選するなかで、残したもの、そばに置いておきたいものとは。そして、来るべき七十代へ向けて、すること、しないこととは。
愛猫を見送り、ひとり暮らしとなった群ようこさんの、ささやかながらも豊かな日常時間をめぐるエッセイです。

版画/岩渕俊彦

第17回 暴風雨とねずみ男

版画:岩渕俊彦
版画:岩渕俊彦

 季節的に雷や夕立があるのは覚悟しているけれど、年々、ゲリラ豪雨をはじめ、雨の降り方がひどくなっている。ゲリラ豪雨も私が若い頃にはなかった言葉だが、最近は線状降水帯という言葉も出てきた。人知の及ばないところなので、文句をいっても仕方がなく、こちらのほうで対処するしかないのだが、竜巻注意報まで発令されるようにもなり、なかなか大変な状況である。
 少し前まではとてもいい天気だったのに、あれよあれよという間に青空に暗灰色の雲が押し寄せてきて、ものすごい量の雨が降る。裏切られたような気持ちになって悲しくもあり、ちょっと腹立たしい。一般の道路が冠水して川のようになったり、床上浸水したり、ピンポン球のようなひょうが降ったりと被害も多々起きている。そんな話をしていたら、都心に会社がある編集者が、
「会社にいたら、雹が降ってきてびっくりしました」
 といっていたので、私もびっくりした。まさか都内の、それも中心部でそんなことになっていたとは知らなかった。ニュースにもならなかったところをみると、本当に局地的な短時間の出来事だったようだ。このように一日のうちで、天候がどうなるかわからないので、外出する際は、天気予報で完全に晴れとならない限り、日傘にもなる晴雨兼用のものを持って出る。問題なのはすでに大雨のなか、外出しなくてはならないときである。

 私はコート好きということもあり、レインコートは必ず持っていた。しかし年々、重いものが体に負担になってきたので、数年前、軽いものに買い替えた。ウエストを絞ったデザインのもの、装飾過多のもの、花柄プリントのものなどを避けると、男女兼用で小さいサイズを選ぶしかないのだが、素材が男性用に寄りがちなので、綿のものよりは軽いけれど、それなりに重さはあった。それでも最初の何年かは大丈夫だったのだけれど、その重ささえしんどくなってしまった。その後もより軽いものをと、目についたものを試着してみたけれど、これといったものはみつからなかった。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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