2023.2.22
歩数増加減量作戦とふたたびのセルフレジ
愛猫を見送り、ひとり暮らしとなった群ようこさんの、ささやかながらも豊かな日常時間をめぐるエッセイです。
版画/岩渕俊彦
第12回 歩数増加減量作戦とふたたびのセルフレジ

実は新年を迎える前に、体重が二・五キロも増えてしまい、年明け後もずっとそのままだったので、これはいかんと頭を抱えた。御飯がおいしくて、ちょっと多めかなと思いつつも食べていたのが、やはりいけなかったらしい。体脂肪率が「+標準」、内臓脂肪率が「標準」にそれぞれ増えてしまい、体重はともかく、体脂肪、内臓脂肪率は元にもどしたい。多めに食べるのはやめにしたが、必要な食べ物は極端に減らしたくないので、運動するしかない。しかしジムなどには通う気はなく、生活のなかで、倍の歩数を歩くことに決めて、それを実行している。
ふだん買い物に行って帰ってくるまでの時間は、三十分くらいで、とりあえず家から出たら帰るまで一時間、そこいらへんを歩き回ることにした。そうなるといつもよりも足を伸ばさなくてはならず、一駅、二駅は歩くことになる。まあそれも散歩がてら楽しもうと思い、買い物のついでに、はじめての場所をどんどん歩いていった。
時計を見ながら小一時間歩き、最寄り駅に戻ってきたときに、もうちょっと歩数を稼ごうとあたりを見まわすと、そのビルの中にあるのは知っていたが、入ったことがない百均の看板が目に留まった。ちょうど切らしていた文房具もあり、ここで必要なものを購入して帰れば都合がいいと、迷わずその店に入った。
本を発送するためのクッション封筒、ガムテープ、領収書を貼付して税理士さんに渡すルーズリーフなどをカゴに入れ、レジの場所を案内する表示を見ながら歩いていったら、そこはセルフレジしかない店だったのである。
(ぎゃっ)
思わず一歩下がって立ち止まった。以前、書いたように、レジに店員さんがいて、支払いのみを自分で済ますセミセルフレジは経験したが、セルフレジでは精算したことがない。
(くくーっ、まさかこんなところでセルフレジに出くわすとは)
まったく心の準備ができていなかった。はじめて行く店だったので、情報もなかったし、他の場所にある店舗には行ったことはあるが、どこも店員さんが会計してくれていた。大手のスーパーマーケットや、大規模な店舗だったら、警戒したかもしれないが、同じ百均の系列店はみんな同じ精算方法だろうと思い込んでいたのが間違いだったのだ。
(どうしてくれよう)
周囲を見まわしながら、何かあったときに助けを求められる店員さんはいるかと探したが、品出しをしている人が遠くに二人いただけで、セルフレジの周辺には誰もいない。しかし前期高齢者は世の中についていかなくてはならないのである。