よみタイ

「お醤油ちょんちょん」が正しい食べ方? 刺身にかけられた「呪い」を解く

 さてそうなると、人々が刺身の日に他にどんなおかずを並べているのかが気になります。特に「都会的に」食べている人々は、何かご飯の進むおかずが別で無いと、献立を成立させることが難しくなるでしょう。そこで僕はまたしても、SNSで尋ねてみました。「お刺身と一緒に食卓に上るのはどんなおかずですか?」
 果たして結果は、ざっくり3パターンに分かれるものでした。まず、刺身は主菜で他にはちょっとした小鉢的な添え物、という人々。これはおそらく「刺身でご飯を食べる」ことが前提になっているでしょう。
 そして、刺身はあくまで副菜で、ちょっと豪華なオマケないし前菜扱い、という人々は、3パターンの中では最大多数。やはり、主菜とするほどたくさんは買えない、という意見は多く見られました。
そして最後のパターンが、いわばダブルメイン的に2種類の主菜を用意するスタイルで、これには大人用と子供用の主菜をそれぞれ用意するという意図も含まれるようです。

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 面白かったのは、刺身と一緒に食卓に上るのは具体的にどういう料理かということ。副菜としては酢の物や茶碗蒸し、主菜としては筑前煮をはじめとする煮物など、つまり昔ほどは作られなくなったであろう純和風の料理が積極的に選ばれていたことです。衰退しかねない純粋な和食文化が刺身によって繋ぎ止められているという現象は、外食の世界、居酒屋などでも同様のことが起こっていると感じます。
 そしてもうひとつ面白く感じたことがあります。特に「刺身は副菜」パターンの中に、ご飯は食べないという人が結構な割合でいました。ステーキの回でも書いた「酒を飲む層と飲まない層のグラデーション」で言うと、刺身という料理は、酒を飲む層の中でも特に生粋の酒飲みに愛されているということも言えるのかもしれません。
 そもそも「さかな」という言葉は、「酒菜」つまり酒を飲むためのおかず(お菜)が語源とされています。成立の順序が逆なのではという説もあるようですが、なんにせよ何百年もの時を経てこの感覚が受け継がれているのは、なんだか途方もないことにも思えます。

次回は8/28(金)公開予定です。

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稲田俊輔

イナダシュンスケ
料理人/飲食店プロデュ―サー/「エリックサウス」総料理長。
鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。
2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。南インド料理とミールスブームの火付け役となる。
SNSで情報を発信し、レシピ本、エッセイ、小説、新書と多岐にわたる執筆活動で知られる。
レシピ本『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー』『ミニマル料理』シリーズ、エッセイ『おいしいもので できている』『食いしん坊のお悩み相談』『異国の味』『東西の味』、小説『キッチンが呼んでる!』、新書『お客さん物語』『料理人という仕事』『食の本 ある料理人の読書録』など著書多数。

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