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この存在がほとんど知られていないなんて! 奥羽山脈の深山に潜む天然橋 大東岳の「北石橋」【山の名&珍プレイス 第10回 後編】

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目に染みるグリーンの木々がモノトーンの大岩を彩る「北石橋」

 透明な清水が流れる大行沢を渡って、枝沢のカケス沢のほうへ入り、あきらかに登山者の通行が少ない登山道を歩き、それからすり鉢状の谷間に下りていく。すると、そこにとうとう現れるのが北石橋だ!岩壁の中央が見事に貫通し、そこから水流が岩をなめるように流れ出している。岩のトンネルを飾り立てるようなグリーンもじつに鮮やか。これが本当に自然に生まれたものなのか。すばらしすぎる!

 大東岳の山域は170万年ほど前に活動していた古い火山で、安山岩が主体。北石橋を作りだしている巨大な岩も古い溶岩だ。どのような経緯で岩に大きな洞窟ができ、水が流れるようになったのか……。想像は太古に及んでいく。

下流から眺めた「北石橋」。楕円形の洞窟から冷たい水が流れ出す姿は、まさに自然の美
下流から眺めた「北石橋」。楕円形の洞窟から冷たい水が流れ出す姿は、まさに自然の美

 それにしても、こんなに美しいのに、どうしてこれほど知られていないのか、本当に僕は理解できない。地元出身の者として無理に考えれば、仙台付近の山好きは他の山域にもこういう場所は珍しくないと思い込み、地元の宝としての価値をあまり感じていないからかもしれない。東北人らしいアピール不足に陥っているようにも思われる。そんなわけで、僕はこの記事で大プッシュしている次第だ。

角度を変えて撮影した写真。水が流れ落ちた先は、小さな滝つぼのようになっている。北石橋は谷間にあるためにカメラの位置を引くことができず、写真にバリエーションをつけにくいのが難点だ
角度を変えて撮影した写真。水が流れ落ちた先は、小さな滝つぼのようになっている。北石橋は谷間にあるためにカメラの位置を引くことができず、写真にバリエーションをつけにくいのが難点だ
反対側(上流側)から見た北石橋。角度的に少々わかりにくいが、トンネルのなかに水が流れ込んでいる
反対側(上流側)から見た北石橋。角度的に少々わかりにくいが、トンネルのなかに水が流れ込んでいる

 人口が100万人を超える仙台市は相当な大都市であるはずだが、それでも北石橋を見に行く登山者は多くない。もしも北石橋が人口のいっそう多い首都圏や関西にあったとしたら、おそらくものすごい数の登山者が見物しに行っているだろう。もしかしたら、遊歩道のようなものが整備され、北石橋の前には柵が作られているかもしれない。

トンネルの上部はご覧の通り。完璧に岩のアーチになっている
トンネルの上部はご覧の通り。完璧に岩のアーチになっている
北石橋に落ちていた標識。これだけ美しいスポットなのに、傷み過ぎていて少々寂しい
北石橋に落ちていた標識。これだけ美しいスポットなのに、傷み過ぎていて少々寂しい

「雄橋」「亀岩の洞窟」とも異なる北石橋の魅力

 どのように計るべきかが難しいが、北石橋の洞窟がある岩の大きさは幅40m、高さ30mくらいだろう。洞窟自体はもっと小さい。奥行きは10mに満たず、規模で言えば前編で紹介した「雄橋」にはかなわない。だが、あちらは誰でも見に行ける観光地で、こちらは完全なる山の中だ。同じく「濃溝の滝・亀岩の洞窟」のようにハート形の光の反射も期待できない。しかし、あちらは人工的な洞窟で、こちらは大自然が生み出した奇跡のような造形だ。どちらと比べても、インスタ映えでも負けていないと思う。

二口渓谷の白滝。登山口から見ると北石橋の手前に当たり、一度の山行でいっしょに見物できる
二口渓谷の白滝。登山口から見ると北石橋の手前に当たり、一度の山行でいっしょに見物できる

 また、大東岳でもっとも有名なスポットは、長さ3km、高さ150m〜200mにも及ぶ大岩壁「磐司岩ばんじいわ」で、山腹に当たる二口渓谷は大小の滝が多い景勝地として知られている。それらに対し、北石橋はいまだ穴場中の穴場の地位にとどまっている。地元出身者の想いを割り引いても、もっと注目されていいスポットではないか。なんとももったいない! まずは見に行ってほしい。きっとその美しさと貴重性がわかるはずだ。

拠点となる登山口は、大東岳山頂の南東に当たる秋保ビジターセンター近く。北石橋への往復だけであれば、所要時間は5~6時間だ (地図の参照元:YAMAP <a href="https://yamap.com/maps/317 " rel="noopener" target="_blank">YAMAPの当該箇所はこちら</a>)
拠点となる登山口は、大東岳山頂の南東に当たる秋保ビジターセンター近く。北石橋への往復だけであれば、所要時間は5~6時間だ (地図の参照元:YAMAP YAMAPの当該箇所はこちら

次回、連載第11回は10/4(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

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