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富士山本宮浅間大社の私有地ではあるけれど……。どこまでが静岡県で、どこまでが山梨県?「県境がどこにもない」富士山のある部分【山の名&珍プレイス 第8回 前編】

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ここだけは静岡県! お鉢の一角、旧富士山測候所と山頂郵便局

 ただし、一部だけ例外がある。剣ヶ峰に建てられている旧富士山測候所(2004年に閉鎖)の敷地だ。ここは国の施設として富士山本宮浅間大社の私有地から外されているのである。気象庁はこの測候所の所在地を「静岡県富士宮市富士山剣が峰」としており、書類上も明確に静岡県だ。また、お鉢の一角の富士山本宮浅間大社奥宮の隣では山頂郵便局が季節営業を行なっているが、そこもまた所在地は静岡県とされている。位置的に静岡県に近いからか、重要施設に関しては山梨県ではなく、静岡県となっているのがじつに興味深い。

至近距離からの剣ヶ峰。溶岩に由来する赤茶けた山肌がむき出しだ
至近距離からの剣ヶ峰。溶岩に由来する赤茶けた山肌がむき出しだ
剣ヶ峰の山頂標。まさに日本一高い場所だ。開山中はいつも大勢の登山者がいて、このように人がいない状態で写真を撮るのはなかなか難しい
剣ヶ峰の山頂標。まさに日本一高い場所だ。開山中はいつも大勢の登山者がいて、このように人がいない状態で写真を撮るのはなかなか難しい
剣ヶ峰の山頂標のすぐ隣に残っている旧「富士山測候所」。「富士山特別地域気象観測所」という看板はそのままだが、内部には入れない。その右側には、山頂標の前で記念写真を撮るために登山者が並んでいる
剣ヶ峰の山頂標のすぐ隣に残っている旧「富士山測候所」。「富士山特別地域気象観測所」という看板はそのままだが、内部には入れない。その右側には、山頂標の前で記念写真を撮るために登山者が並んでいる

 僕が以前から気になっているのは、もしも自分が怪我をして救助を求めた場合、どちらの県の管轄になるのか、ということだ。一般的に登山の際に遭難などのトラブルを起こすと、基本的にはその場所を管轄している警察や消防署のレスキュー隊員などが捜索・救助を行なう。そんなとき、このような県境未確定地ではどうなるのだろうか? だが、それを知るためにわざと遭難するわけにはいかない。でも、実際はシーズン中の富士山のサポート体制は完璧だから、どちらの県が救助を行なうのかなどわざわざ決めることもなさそうなのだが。

 現在、日本ではこのような富士山山頂付近を含む14カ所が県境未確定だ。そのなかの10カ所が山岳地帯である。やはり人間がつねに暮らしていて権利関係が複雑な平野や盆地などとは異なり、曖昧なままでもなんとかなってしまうため、その状態を解消せずに現在まできてしまったのだろう。場所によっては熾烈しれつな利権争いも起きていたりもするが、富士山に関してはこれからも平和で済みそうだ。2014年1月に行われた富士山世界文化遺産協議会を踏まえ、両県の知事がこれからも県境を定めないことを明言しているからで、少なくても当分の間は、富士山には静岡県なのか山梨県なのか不明瞭なエリアが残ることになる。なにかと厳密すぎる日本には、そんな曖昧な場所があってもいいのではないかと僕は思う。

(7月12日(日)9:00公開の後編に続く)

次回、連載第8回<後編>は7/12(日)9:00公開予定です

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

Instagram: @shotarotakahashi
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