2026.4.4
焚き火マイスター 猪野正哉 人生は立ち止まったり、座りこんだり。10年の暗黒を脱して“焚き火”を生業に【実録・メンズノンノモデル 第5回 後編】
第5回は猪野正哉さん。メンズノンノモデルから一転、借金返済に明け暮れる引きこもり生活を送った30代のエピソードを語った前編に続いて、後編は、現在の生業となった「焚き火マイスター」について。
取材・文/徳原 海 撮影/山田 陽
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立ち止まったり座りこんだり、振り返ったり。山と人生は同じ
前編で書いたように、事業の失敗から借金を一身に背負わされ引きこもり生活を送る猪野が、そのどん底から這い上がるきっかけとなったのは、「山」だった。ある友人が、半ば強制的に連れ出してくれたのだという。
猪野正哉(以下、猪野) 引きこもり時代は誰とも連絡を取っていなかったのに、1人だけ執拗に連絡してくるヤツがいたんです。そのたびに「山に行こうよ」って。モデル時代に知り合った友人で、今は「TEMBEA」というブランドで仕事をしている男なんですけど、とにかくしつこかった(笑)。ついに僕が根負けして「じゃあ一回くらい付き合ってみるか」と。それで明神ヶ岳(1,169m)という箱根の名山に彼と日帰りで行ったんです。
山での体験は、まさに目から鱗だった。大自然との対峙によってもたらされた心地よい疲労感とともに、ある気づきが再び猪野に生きる活力を与えた。
猪野 山を登って、下りて、くたくたになりながらまず思ったのは「自分の悩みや苦しみなんてこの世界では本当にちっぽけなことだ」ということ。山登りって、立ち止まったり座りこんだり、振り返ったりを当たり前のように繰り返すじゃないですか。それが日常でもできていたら、こんなことにはならなかったんだろうなと。山が、それまでの僕の人生を戒めてくれたように感じたんです。
以降、一ヶ月に3〜4回は山に登るようになった猪野。 社会と隔絶し、借金を返すためだけに深夜の倉庫で働いた10年の間、一時は「メンズノンノモデルになんてならなければよかった」とさえ思ったという。その閉ざされた心が、徐々に、外へ外へと解き放たれていった。

猪野 引きこもって、人間関係をゼロにして、一時は命を絶つことも考えたけれど、その勇気すら自分にはなかった。そして、最終的には逃げることに疲れた。かつて迷惑をかけた人たちからはいろいろ言われるかもしれないけど、それでもいいや、外の世界に戻ろうという気持ちになってきたんです。余談ですが、山にはまっていくうちに、本屋に行って山関連の本や雑誌を探すようになったんですけど、あるとき、専属モデル時代にメンズノンノの編集者だった方が、「山岳ライター」として雑誌に出ていて。それが僕にとってはすごくインパクトが大きかったんです。「いつか彼と仕事で一緒に山に登りたい」と、純粋にそう思ったんですよね。後々その目標が叶ったときは涙が出そうでしたよ。
その編集者とは、現在もテレビやアウトドアメディアなどで活躍中の山岳ライター高橋庄太郎さん。よみタイでも「目指すのは山頂よりも、面白い寄り道 山岳ライター・高橋庄太郎の山の名&珍プレイス」を連載中だ。
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