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小野一光「限界風俗嬢」
過去の傷を薄めるため……。「してくれる」相手が欲しい……。
性暴力の記憶、セックスレスの悩み、容姿へのコンプレックス――それぞれの「限界」を抱えて、身体を売る女性たち。
そこには、お金だけではない何かを求める思いがある。
ノンフィクションライターの小野一光が聞いた、彼女たちの事情とは。

これまでの連載では、元SM嬢のアヤメ歌舞伎町で働く理系女子大生リカセックスレスの人妻風俗嬢ハルカの3人の女性を紹介してきました。

今回は、前回に続き、処女なのに風俗で働く女性・カオルのプライベートが明らかに。
男性との行為に「興奮しない」という彼女は、現在女の子と付き合っているそうで……。

処女風俗嬢が恋に落ちた「同僚の女の子」

恋人同士でSMクラブに入店

「女の子と付き合ってるのは、いつ頃くらいから?」
「うーん、大学に入って三年生のとき」
「相手はどういう人なの?」
「相手は……シホさん」
 恥ずかしそうに言う。
「え、××のシホさん?」
「そう」
 
 ここで名前の挙がったシホという女性は、彼女が働くSMクラブに在籍している女の子だ。私自身は取材していないが、カオルと同い年でシホという女の子がいることは知っており、店でカオルの取材をしたとき、彼女から店で仲良くしている子として名前が挙がっていた記憶がある。
「シホさんは大学は別だったの?」
「一緒です」
「はーっ、そうなんだ」
「あと、就職先も一緒です」
「ええっ」
 つまり、彼女たちは大学の同級生で同じ会社に就職し、密かに付き合っている同性のカップルであり、それに加えて、ともに異性を相手にするSMクラブで働いているということになる。その倒錯した世界に軽い混乱を覚えた。
「一緒に住んでるの?」
「いや、一緒には住んでないです。私が実家なんで」
「そうすると、彼女とのセックスはどこでするの?」
「うーん、たまに親が祖父母の家に行っていないときがあるんで、そのときにうちに呼んだりとか、普通にホテル行ったりとか、あとシホさんはひとり暮らしなんで、そっちに行ったりとか……」
「なんで一緒に住まないの?」
「いや、住みたいんですけど、うち犬を飼ってて、親も働いてるんで。犬の世話、誰がすんの、みたいなのがあるんです。両方とも一緒に住みたいとは思ってるんですけどね」

 そこで私は、彼女がシホさんと付き合うことになるきっかけを尋ねた。
「まず大学に入って気が合う友達って感じで、ほんとにずっと一緒にいて……」
「専攻とかは一緒なの?」
「そう。もう全部一緒です。それで三年生のときに私が合コンに何度か行ってて、相手の男の人と珍しくラインが続いたんですけど、そのとき私のなかで、でもなあ、この人と付き合うのかぁ~、でもなあ~、みたいに考えて、この人との未来が見えないって感じだったんですよ。ていうか、未来が楽しいものに思えなくて、じゃあ私、誰が好きなんだろうって考えたときに、シホさんが頭に浮かんで、うーん、みたいな……」
「どっちが告ったの?」
「それから一週間くらいして、私から。あの、うちに泊まりに来たんですけど、そのときにちょっと『好きかもしんない』みたいに言って。そうしたら向こうも、『いや、(私も)好きだったっす』って」
「相思相愛だったわけだ」
「でも向こうは、『カオルさんが合コン、合コンとか、彼氏作んなきゃとか言ってたから、なんか(好きとは)言っちゃダメだなって思ってた』って」

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小野一光

おの・いっこう●1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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