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妊娠した女子高生が行った悲しすぎる「秘技」

自己流で行った堕胎術

 やがて高二で援交をする必要がなくなったアヤメだが、それでも惰性で続けていたと語る。

「おカネにもなるし、いままで日常的にしていたことだったから、やめられなかったんです。その時期、援交相手で一人だけ連絡を取ってた人がいたんですね。三十代後半の銀行員で、将来結婚するからと話してました。ただ、私の親に会ってもらおうとすると、渋ってたんです。で、私が『妊娠したっぽい』と言ったら連絡が取れなくなりました」

 やはり、この時期の彼女は誰かに依存しないとやっていけなかったのだと思う。肉体をすり減らした分を、心の充足で補おうとしていたのだ。だからこそ、甘い言葉を囁かれると、ついその言葉を信じて身を預けてしまう。

「その当時、自分には援交での稼ぎがあったので、おカネは持ってたんですね。それで興信所に彼のことを調べてもらったんです。そうしたら私に話していたことは嘘で、結婚していることがわかりました。それで、これは流すしかないなって思って……」

 流すしかない、とは堕胎のことだ。本来は重い言葉を、彼女はさらりと口にした。

「だけど未成年は親の承諾が必要じゃないですか。とてもじゃないけど、そういうことを切り出すわけにはいかなかった。妊娠に気付いて一カ月経ってないうちだったので、まだ(堕胎が)できると思いました」
 
 そこでアヤメが取った手段を耳にして、私は言葉を失った。

「ネットで漢方薬と西洋医学の論文を読んで、自分で堕胎薬を作ったんです。選んだのは江戸時代の遊女のやり方。自分で調合して、飲む用と、下から入れる用のものを作りました。飲む用の薬は一週間くらい前からちょっとずつ飲んでたんですね。常に頭が痛くて、吐き気がして、立っているのがやっとの状態でした。それで当日、学校のトイレで下から入れる用の薬を入れて、二時間くらいでスプーンで自分で掻き回して、そうしたらすごくお腹が痛くなって……」
 
 ただ頷くことしかできない。

「アソコから、七~八センチくらいの、半分、魚っぽいのが落ちてきたんです。高三の六月二十四日です。その日付だけは、いまだに忘れられません。埋葬はできなかったので、学校の花壇のモミジの木の根元に、『ごめんなさい』と言って埋めました。それ以降、お地蔵さんの前ではいつも祈ってます」

 妊娠と堕胎は、周囲の誰にも悟られなかったそうだ。

「お腹とか全然出てないので、誰も知りません。そのあともしばらく頭痛と吐き気に襲われてて、保健室登校をしてました。学校にはクラスに馴染めないと言い訳をして……」

 明るくはしゃいでいる生徒がいる傍らで、アヤメが選択したのは、みずからをひどく傷つける行為だった。誰にも相談できなかったということは、そのすべてを高三の彼女がひとりで受け止めたということになる。

「しばらくはなにも考えられない時期が続きました。ただ、そのうち進路の話になり、自分がいちばん辛いときになにをやってたか考えて、癒しになっていた文学系の学部を受けようと思ったんです。そこで気持ちを切り替えて、受験勉強に打ち込みました」

 目標とした大学に現役で合格した彼女には、新たな道が開けたという。

「大学に入ったら落ち着いて、やっといままでのことを振り返れるようになったし、話せるようになりました」

 その大きな原動力となったのは、大学一年の十月から付き合うようになった彼氏の存在だった。

大学に入学したアヤメが、彼氏がいても風俗を続ける理由とは?第4回に続く

連載第1回はこちら。
連載第2回はこちら。

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小野一光

おの・いっこう
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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