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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

ネトウヨ系根性の男〜生中出しの論理に注目したい話

私は別にオトコがしがみついてる利権を無理に奪ってしなくてもいい労働をしようと積極的に思ってるタイプではないけど、企業の管理職がいろんな性別とセクシュアリティのミックスになっていることの利点の一つは、文字通り敵と寝るとか、仲直りセックスで問題を曖昧なまま乗り越えるとか、性欲が論理を超えるとか、そういうことがもっと頻繁に起こり得ることかなと思う。

最近は米最大手のファーストフードのトップが社内恋愛でクビになったりして、以前より一層仕事と性の棲み分けに神経質な世の中にはなったけど、理性による主体的決断も感性によるスタイルの選択も超える、唯一の飛び道具に性愛があると頑なに信じるトンデモ論者の私は、喧嘩してる国のトップ同士が、合併で揉める企業の役員会全員が、24時間セックスしまくってみればいーじゃん、と半ば冗談半ば本気で思っている。
映画や小説が無理やりなプロットを円滑に進めるために恋とか愛とかを使わざるを得ないのはその飛び道具が強力なせいで、現実が映画や小説のようにいかないのはそんな飛び道具が現実には応用困難なせいなんだけど。

敵と寝るという世界平和に一番近い行為

というわけで私は、敵と寝るという世界平和に一番近い行為の愚直な実践者でもある。
会社員などしていた頃なんて、憎んでも憎みきれない憎いヒト、というか憎い上司や先輩というのが社内にうじゃうじゃいるものだけど、人を憎むというのは実は相手より自分の精神衛生に顕著なダメージを与える状態なので、ああ憎いああ嫌いと日々嫌悪感にまみれているよりは、対象に積極的に近づいて小指でも噛んでみたりアナルに指でも突っ込んでみたりする方が、社内生活はなんとなくストレスフリーに近づくような気がする。
向こうは向こうでなんとなくいけ好かない女だと思っていた相手が、今まで誰も褒めてくれなかった自分の舌のテクニックで見たことないほどヨガっていたら、そのいけ好かなさによるイガイガした気持ちを緩和して、清々しい毎日が送れるかもしれないし。

敵と寝るのも芸のうち
敵と寝るのも芸のうち

という心理学は全く机で勉強したことないけど人の心理は街とベッドで体得した気満々の私による会社生活ハウツーは当然結構間違っていて、腹の立つ上司は一回寝たらさらに腹の立つ横柄な態度になったり、いけ好かない部下とヤった話を平気で酒の席の肴にしたりすることもあったけど、とにかく自分の怒りや悲しみ、ストレスや憎しみとどう対峙するのかをストラグルしながら考え実践して、間違えながら生きていくしかないと思うのです。
小さい頃は神様がいて、泣き叫んだり全力でものを投げたりしても許されるけど、そうヤって悲しみやストレスが醜い形で外に滲み出てしまわないように、カーテンを開いて自分の中で消化できるようになった生き物を、私たちはオトナと呼ぶ。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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