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藤原綾「女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住」

死んだ私を見つけてくれるのは誰なのか

地域社会に入り込めるうちが花

 私がもうなくなったと思っていた地域社会は、実はまだ細々と生きていました。実家にひとりで暮らすことも一瞬頭をよぎりましたが、電話をかけてきてくれたおばさんも、斜向かいのおばさんも、町内会のおじさんも、みんな父と同じ世代で、いずれはいなくなります。
 かつて老夫婦ふたりが住んでいた対面の一軒家は、今では一部屋15平米の3階建て9戸のアパートです。どんな人が住んでいるのか、もちろんまったく知りません。区外の中学に行ってしまったため、地元の友人はほぼ皆無。多くの友人は東京で点々と暮らし、今住むマンションではこんな有り様です。
 どうなるかはわからないけれど、普通に考えれば、まだ人生は40~50年はあるはず……。
 ひとりで生きていく私には、もしかしたら地域社会が必要なのではないかと思うようになりました。
 中学生の頃、苦手だったおばちゃんの印象も強いけれど、私の健康と幸せを心から願ってくれた他人が身近にいたのは確かです。
 日本中を旅して回り、たくさんの人に助けられてきました。バスの時刻を間違えて吹雪の中で突っ立っていた私に声をかけてくれた老夫婦、獣道に迷い込んでしまったときに助けに来てくれた役場の人、山の上のペンションにスマホを忘れた私をわざわざ送ってくれた土産店の店主。そしてみんな、私が旅人だと知ると、助けるついでに地元の人だけが知っている絶景スポットに連れて行ってくれたのでした。私が“お客さん”だったこともあるとは思いますが、それでも地方にはまだ、当たり前のように助け合う地域社会が残っているのだと思います。

 いくつになっても同級生とは当時と変わらない関係でいられるように、地域も恐らくそんな関係性を築く場所なのでしょう。少子高齢化に加え、非婚化もどんどん進む中、さまざまな境遇にいる他人同士が、同じ地域に住んでいるだけで助け合うことができる地域社会。これが壊れたら、私だけでなく多くの人が困ることになる気がします。実際に孤独死はどんどん増えています。
 東京が変容していくなかで、私はこのままここで暮らしていて、本当に大丈夫なのでしょうか。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

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