よみタイ

群ようこ「今日は、これをしました」
物を減らす、無駄なことはしない、必要以上に買わない。
「しない。」生活のなかだからこそ、手に入れるもの、するべきことは
試行錯誤を繰り返し、日々吟味している群ようこ氏。
そんな著者の「しました、食べました、読みました、聴きました、着ました」
など、日常で「したこと」をめぐるエッセイです。


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刺激を受ける曲を聴く

今日は、これをしました 第17回

 テレビの音楽番組を観ることがなくなり、ラジオやたまに観るテレビからのヒット曲の情報しかないのだが、最近のヒット曲は、歌っている人たちの声が、男女とも高くなっているような気がする。昔だったら考えられないくらい、高いキーで男性が歌っていて、それも時代の流れなのだなあと興味深い。
 二、三年ほど前、ラジオを聴いていたら、若い女性歌手が番組のゲストとして出ていた。ラジオで耳にした歌声が気になって、名前を調べた人だった。とても歌唱力がある人で、歌声には迫力があるのに、話している声はそうではない。MCの人が、
「歌っているときの声と違いますね」
というと、一言一句は覚えていないが、彼女は、たくさんの歌手の人がいるので、そのなかで自分を知ってもらうためには個性が必要なため、歌うときには声を作っているといっていた。それを聞いて私は、
「へえ、そういうこともあるのか」
 と驚いた。
 古い話で申し訳ないが、たとえば森進一もりしんいち、亡き青江三奈あおえみなは歌っているときもハスキーだが、話しているときも同じ声だ。歌手志望の男性で、声がきれいなのでレコード会社から声をつぶせといわれ、海に向かって大声で叫び、好きでもないタバコを吸い続けて、声をつぶしてデビューができたという人もいた。男性の声は低くて渋いほうが売れると判断した、会社の方針だったのだろう。地声と歌声が違う人はいるけれど、女性も個性を出すために声を作る時代になってきたのだと知ったのである。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『おたがいさま れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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