よみタイ

44年間、奥二重で生きてきたおじさんが、二重まぶたに挑戦してみたら

 アイテープを付けて就寝することで、二重のラインを習慣づかせ、自然な二重まぶたを作ることも可能なのだという。なるほど、思春期の頃、アソコの大きさに自信がなかった私は、エロ本で読んだ「外国人男性のアソコがデカいのは、子供の頃からパンツを履かずに寝ているから、アソコが布団で刺激されて自然にデカくなる」という三文記事を鵜呑みにし、数年間ほどノーパンで寝ていた時期がある。結果は推して知るべし。そうか、綺麗な二重まぶたも大きなアソコも一日にして成らずというわけなんだな。最近は就寝時にイビキ防止テープを貼っているのだが、併せてアイテープも貼ってみよう。

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 翌日、いよいよ真打登場。口コミランキング1位のすぐれもの「オリシキ」である。まず名前が格好良い。「雪崩式」とか「百式」とか「断崖式」とかそういう言葉に男は弱い。
 これまた仕組みはいたって簡単で、アイテープと同じく理想のラインを設定し、まつ毛の生え際からそのラインまで専用液を塗るだけ。後は液が乾くまで三十秒ほど目を閉じて待ち、ゆっくりと目を開くとまぶたが内側に綺麗に織り込まれて、自然な二重まぶたの出来上がりという仕組みである。なるほど、だからオリシキというんだな。ガッテンガッテン。
 いや、これは確かに凄い。そりゃ人気があるわけだ。塗って乾かすだけのシンプルさが素晴らしい。

オリシキやってます
オリシキやってます
オリシキすげ~。
オリシキすげ~。

 それからというもの、毎日のようにオリシキとアイテープを試してアイメイクに勤しんでいる。時を忘れてメイクに没頭していると、夢中になってファミコンをしていた子供時代を思い出す。大人になってもまだハマれることはあるんだな。人生を豊かにしてくれる沼はそこらじゅうに存在しているのだ。
 アイメイクを続けていると、彼女がよく言っている「今日は二重の調子が悪いわ~」という言葉の意味も少しずつわかってきた。女の子はこんな大変なことを毎日繰り返しているんですね。本当に頭が下がる思いです。

 ただ大きな誤算もあった。何度も何度もアイテープを貼ったり剥がしたりしたために、目の周りが真っ赤っ赤になってしまった。そしてひどく痛い。何しろまぶたをまったく触らない人生を歩んできたものだから、まぶたの耐性が弱いのだ。
 彼女に聞いてみると、みんなそうやって大変な思いをするから、もういっそのこと整形をしちゃおうって子が増えているらしい。なるほど。整形をする理由には、そういう側面もあるんだな。うん、気持ちはわかる。だって今の私なら、安全でお得な手術があったら整形に踏み切ってしまいそうだもの。
「俺もいつか二重に整形したいって言うかもしれない。そのときは笑って許してくれよな」と彼女に伝えると、「早めに教えようと思ってたんだけど……」とかしこまった顔で彼女は言った。

「あんた、なんか二重が似合わないんだよね」

 自分でも薄々そう思っていた。でもメイクってのは似合う似合わないでやるもんじゃないので、もう少しだけ続けてみます。いや、続けさせてください。今後開催されるトークイベントではパッチリ二重の爪切男を見られるかもしれません。こうご期待。

 それでは最後に、つけまつげも付けてフル装備のアイメイクをした私の写真をご覧ください。嗚呼、素晴らしきかな、わが人生よ。

つけまつげも付けてフル装備。
つけまつげも付けてフル装備。

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当連載は毎月第2、第4日曜更新です。次回は5月12日(日)配信予定です。お楽しみに!

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「よみタイ」連載の単行本化した「クラスメイトの女子、全員好きでした」が文庫になります!
小学校から高校までいつもクラスメイトの女子に恋をしていた。きっと誰もが“心の卒業アルバム”を開きたくなる、せつなくておもしろくてやさしい全21篇のセンチメンタル・スクールエッセイ。
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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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