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美容初心者おじさんがつけている美容ノートと”私だけの赤ペン先生”

爪切男、四十にして惑う?
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。『クラスメイトの女子、全員好きでした』をふくむ3か月連続エッセイ刊行など、作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は夏本番に向け、初めて本気で紫外線との闘いに挑んだ話でした。
今回は、日々つけている美容ノートについてのエピソードです。

(イラスト/山田参助)

第22回 世のおじさんよ、他人の意見に素直に頷こう。頷いた数だけ私たちは綺麗になれる

 数ヶ月前から「美容ノート」なるものを始めた。俗にいう「自分磨きノート」(シンデレラノート)というやつである。

 目指すべき理想の自分の姿、それを実現するために必要なこと、そして日々の努力の成果を書き記したり、時には読み返したりすることで、将来のビジョンや問題点が明確になり、目標の達成に近づけるというのが、美容ノートの利点である。
 SNSやネットで検索してみると、性別、年齢を問わず、実に多くの人が自分だけの美容ノートを作成している。化粧水とパックに飽き足らず、紫外線対策、足の角質ケア、食生活の改善と、美容と健康に関することなら何でもござれで手を出してきた私。ここいらで一旦深呼吸も兼ねて、美容ノートで自分の生活を見直してみるのも悪くないだろう。

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 そんな美容ノートにもオススメの書き方があるようだ。まずは「なりたい自分」を、次に今の自分の状態を記す。目標と現状を照らし合わせることで見えてきた課題をノートにメモしていく。
 しかし、いざ「なりたい自分」と言われても、コレといったものが浮かんでこない。綺麗になんかならなくてもいい、少しだけマシなおじさんになれたら、私はそれで満足なのに。
 なかには「なりたい自分」のページに、理想とする有名人の写真を貼る人もいるらしい。なるほど、それぐらいなら私でもできそうだ。よし、最終目標とするぐらいだからハードルは高めに設定しよう。私のような坊主頭の男性が目指すべき最高峰の存在、それはジェイソン・ステイサムしかいない。プリントアウトしたステイサムの写真をノートにペタリと貼り付け、力強い筆致で「ステイサムに俺はなる!」と書き殴る。
 不思議なもので、どれだけ無茶なものでも目標が定まるとやる気が湧いてくる。ステイサムになることを目指し、私はダイエット、スキンケア、筋トレに今まで以上に精を出すようになった。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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