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横浜市長選挙で起きたもう一つのバトル。「落選運動」を展開した郷原信郎氏にいろいろ詳しく聞いてみた。

警察からの唯一の電話は「殺害予告がありました」

――落選運動は団体での活動は認められていないんですか。

郷原 そうです。そこが問題。落選運動を個人としてやる分には制約がありません。ビラも連絡先のアドレスを入れていれば、公選法上は問題ありません。

――街頭演説はできないのでしょうか。

郷原 街頭演説で「あの人は駄目です。あの人には投票しないようにしましょう」ということを私個人で訴えることはできます。ただ、やっぱり横断幕やのぼりのようなものがないと、みんな注目してくれません。だから街宣運動は無理だなと思いました。何人かが集まってやると「団体としての活動」と疑われてしまう。あくまでも個人としてやることの限界はありました。

――候補者に比べると、運動の拡大という意味では多勢に無勢ですね。

郷原 候補者の良い面、悪い面の情報を有権者に提供して選んでもらうということの重要性を考えると、今後は団体としての活動を認めてもらえると落選運動はやりやすくなると思います。現行法上は任意団体としての活動はできません。つまり、「山中候補の当選を阻止する会」というような団体を作って活動することはできません。

――もう一つ驚いたことがあります。「落選運動」は投票日当日も可能なんですね。

郷原 公選法上、「落選運動」には期間の制限がありません。事前運動の規制もありませんし、投票日当日も可能です。これは選挙プランナーを通じて選管に確認済みです。ただし、特定候補の当選を目的に行う「落選運動」は選挙運動になるので、選挙当日は禁止です。

――事前運動はやっていいのでしょうか。

郷原 事前運動も規制はありません。選挙前に出馬表明をした人について「あの人は出馬表明をしているけど駄目ですよ」とガンガン言っても問題がない。現状では、告示前までは団体での政治活動はできる。告示日以降は全部バラバラに個人でやるしかない。ただ、個人でやるのであれば、投票日に投票所の近くで個人としてビラを配ってもいいんです。

――選挙運動の取り締まりは警察の管轄です。今回の落選運動に関して、警察からの注意や警告はなかったんでしょうか。

郷原 まったくありませんでした。警察から来た電話は、麻布警察署から「警察庁の公開アドレスに、郷原さんへの殺害予告がありました」というものだけでした(笑)。

――物騒なことを笑って言わないでください。

9月6日。横浜市会議長に対して「横浜市大への不当圧力問題」の事実解明を求める請願書を提出した郷原信郎氏。記者会見で「他の問題も追求は続けていく」と語った。(撮影/畠山理仁)
9月6日。横浜市会議長に対して「横浜市大への不当圧力問題」の事実解明を求める請願書を提出した郷原信郎氏。記者会見で「他の問題も追求は続けていく」と語った。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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