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台湾、アメリカ……世界の選挙と比べて考えた、「日本人はもっと選挙を楽しむべき」だ

20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。 前回の第3回では、選挙に出続ける「ホームレス路上演奏家(!?)」の壮絶なストーリーをお伝えしました! 2020年、初回の第4回目では、今年大注目の台湾、アメリカの選挙取材経験をもとに、「選挙の楽しみ方」について考えます。 

台湾。とにかくデカい選挙事務所!(撮影/畠山理仁)
台湾。とにかくデカい選挙事務所!(撮影/畠山理仁)
露店では候補者のフィギュアまで! まさに「お祭り」なのだ。(撮影/畠山理仁)
露店では候補者のフィギュアまで! まさに「お祭り」なのだ。(撮影/畠山理仁)

選挙はもっと楽しんだ方がいい

 国内外の選挙を取材してきて思うことがある。日本人は政治や選挙を難しく考えすぎだ。私は声を大にして言いたい。日本人は、もっと選挙を楽しんだほうがいい。

 競馬を好きな人が競馬新聞を読むように、株をやる人は日経新聞を読むだろう。それと同じ感覚で新聞の政治欄を読んだり、テレビの政治コーナーを楽しんだりしてほしい。

 世界の選挙を見てきて、とくに選挙を楽しんでいると感じたのが台湾の人たちだ。今年1月11日には台湾総統選挙が行なわれるが、私が初めて取材した2000年の台湾総統選挙も、ものすごい盛り上がりだった。

 そもそも選挙事務所がデカかった。9階建てのビルを丸ごと借り切っていた。誰もが気軽に入れる一階のホールには現代アートのオブジェが置かれ、ベンチに座った若いカップルが抱き合っていた。選挙事務所がデート場所になるくらいカジュアルなのだ。

 小学校の体育館で行なわれた選挙集会では、演説の後にスクーターや電子レンジなどの豪華景品が当たる大抽選会があった。クジに当たっていない人まで「当たった!」と大騒ぎして壇上に上がってきた。係員がクジを確かめて外れた人たちを壇上から引きずり下ろすと聴衆は大爆笑していた。

 抽選会が終われば校庭に移動し、用意されたテーブルとイスに座って大宴会。デザートが配られるとみんな殺到する。その政党を支持するかどうかに関わらず、みんなが楽しく食事をしながら熱く政治を語っていた。

 街中に出現した露店では、候補者の名前が入ったTシャツやマグカップ、ステッカーはもちろん、携帯ストラップや候補者のフィギュアまで売られていた。書店には候補者の写真集。家電量販店に行けば「台湾総統になろう」というゲームが並んでいた。それも1種類ではなく、数種類あった。ゲーム中に起こるイベントも「暴力団に相手候補の妨害を頼む。300万円払う」とか、「それがバレて大スキャンダル」とか、どこかで聞いた話がたくさん盛り込まれていた。

 TVのCMでもバンバン政治批評が行われる。誰もが政治と無関係ではいられないから、政治を語ることをタブー視しない。みんなが楽しく政治批評をし、楽しく応援をしていた。

 これが20年前の話だ。それなのに、日本ではいまだにここまでの盛り上がりはない。

 ちなみに今回の台湾総統選挙では、民主進歩党の蔡英文陣営が「總統府大冒險」というシュミレーションゲームを提供している。

 単なる応援サイトがやっているのではない。なんと、蔡英文陣営の公式サイトだ。日本でも、これぐらい思い切った取り組みをする政治家がそろそろ出てきてもいい頃だ。

蔡英文陣営の公式サイトにあるシミュレーションゲーム「總統府大冒險」。日本のマンガ、アニメ、ゲームの影響を感じさせるキャラクターだ。
蔡英文陣営の公式サイトにあるシミュレーションゲーム「總統府大冒險」。日本のマンガ、アニメ、ゲームの影響を感じさせるキャラクターだ。
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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