2021.7.6
東京都議会議員選挙でまず伝えるべき結果は「投票に行った有権者、過半数に届かず」だ!



票を捨てる有権者よりもゴミを拾う候補者の方が好きだ
今回の都議会議員選挙を取材して感じたことがある。それは「ゴミ拾い」をする候補者や陣営が増えたことだ。もちろんこのことを「点数稼ぎだ」と批判する人もいる。しかし、私は票を捨てる有権者よりもゴミを拾う候補者の方が好きだ。
今回の都議会議員選挙中もゴミ拾いを続けている候補者はいた。前出の宮瀬候補の他にも、葛飾区選挙区から立候補した、ごとうてるき候補(SDGs党)。渋谷区選挙区から立候補した込山洋候補(無所属・スマイル党推薦)。そして、新宿区選挙区から立候補した木下ようすけ候補(全都黎明)がいた。
また、候補者本人が街頭演説をしている間、支援者がその場所のゴミ拾いをする陣営もあった。大きな音で迷惑をかけた分、地域に貢献しようという姿勢がうかがえた。今後はどの陣営でもスタンダードになってほしい。
今回、私が名前を挙げた候補者は、選挙だからゴミを拾っているわけではない。選挙に関係なく、何年も前からゴミ拾いをしてきたことを私は知っている。
ごとう候補は、今回、ナスの着ぐるみを着ていたが、選挙中も河川敷でゴミ拾いをしていた。着ぐるみで「ふざけた候補」と思われがちだが、確実に社会貢献をしている。
ごとう候補に「なぜゴミ拾いをするのか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「自分の部屋にゴミが落ちていたら嫌じゃないですか。それと同じ感覚です。自分がいる空間はきれいな方がいい。だからゴミ拾いをしています」
込山候補も、もう5年以上、継続的にゴミ拾いをしている。木下ようすけ候補も2年以上、新宿区内でゴミ拾いをしてきた。いずれも選挙に出るためではない。自分の人生の意味を考えた末、「地域のために役立ちたい」という感情からゴミ拾いをスタートしている。
なかでも今回、木下候補は街頭演説は一切せずに、ひたすら選挙区内をゴミ拾いして歩くという選挙運動を展開した。極めて効率が悪い。「選挙に出なくてもできるだろう」と批判することも簡単だ。
しかし、タスキをかけてゴミ拾いをしていると、いろんな人が声をかけてくれたという。選挙を知らせる啓発効果は十分にあったのだ。
「タスキを見て、『そういえば選挙だね』と気づいてくれる若者や、『ありがとう』と行ってくれる年配の方がたくさんいました。私は投票に行った人にクーポンを出すことで投票率95%を目指しています」(木下候補)
100%ではない。その5%はなんなのだろうか。
「100%はさすがに非現実的だろうと思って、95%にしました。投票が義務化されている国では90%台の投票率の国も普通にあります。95%なら実現できると考えました」
私が木下候補に会ったのは大雨の日。カッパを着た上からタスキをかけ、早稲田通りのゴミ拾いをしていた。この日は大きなゴミ袋3つをパンパンに集め、一度捨ててから4袋目に突入していた。ずっとゴミ拾いをするのはつらくありませんか?
「つらいです! もう、足がパンパンで」
まさかの即答。それなのに、なぜゴミ拾いを続けるのか。
「ゴミを拾っているとみなさんが声かけてくれますし、僕自身も気持ちいいんです。なによりも、地域に貢献している感じがするんです」
木下候補は11人中10位の523票で落選。供託金も没収されてしまったが、会社を辞めずに有給休暇を取って選挙に出られることを証明した。
今回の都議選の投票率が低かったことはとても残念だ。それでも私は強く思う。
意味のない立候補は、一つもない。

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