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東京都議会議員選挙でまず伝えるべき結果は「投票に行った有権者、過半数に届かず」だ!

渋谷区選挙区から立候補した込山洋候補(無所属・スマイル党推薦)。5年以上、継続的にゴミ拾いをしている。(撮影/畠山理仁)
渋谷区選挙区から立候補した込山洋候補(無所属・スマイル党推薦)。5年以上、継続的にゴミ拾いをしている。(撮影/畠山理仁)
新宿区選挙区から立候補した木下ようすけ候補(全都黎明)。街頭演説は一切せずにひたすらゴミ拾い。ゴミ袋はすぐにいっぱいだ。(撮影/畠山理仁)
新宿区選挙区から立候補した木下ようすけ候補(全都黎明)。街頭演説は一切せずにひたすらゴミ拾い。ゴミ袋はすぐにいっぱいだ。(撮影/畠山理仁)
葛飾区選挙区から立候補した、ごとうてるき候補(SDGs党)もゴミ拾い。(撮影/畠山理仁)
葛飾区選挙区から立候補した、ごとうてるき候補(SDGs党)もゴミ拾い。(撮影/畠山理仁)

票を捨てる有権者よりもゴミを拾う候補者の方が好きだ

 今回の都議会議員選挙を取材して感じたことがある。それは「ゴミ拾い」をする候補者や陣営が増えたことだ。もちろんこのことを「点数稼ぎだ」と批判する人もいる。しかし、私は票を捨てる有権者よりもゴミを拾う候補者の方が好きだ。

 今回の都議会議員選挙中もゴミ拾いを続けている候補者はいた。前出の宮瀬候補の他にも、葛飾区選挙区から立候補した、ごとうてるき候補(SDGs党)。渋谷区選挙区から立候補した込山洋候補(無所属・スマイル党推薦)。そして、新宿区選挙区から立候補した木下ようすけ候補(全都黎明)がいた。

 また、候補者本人が街頭演説をしている間、支援者がその場所のゴミ拾いをする陣営もあった。大きな音で迷惑をかけた分、地域に貢献しようという姿勢がうかがえた。今後はどの陣営でもスタンダードになってほしい。

 今回、私が名前を挙げた候補者は、選挙だからゴミを拾っているわけではない。選挙に関係なく、何年も前からゴミ拾いをしてきたことを私は知っている。

 ごとう候補は、今回、ナスの着ぐるみを着ていたが、選挙中も河川敷でゴミ拾いをしていた。着ぐるみで「ふざけた候補」と思われがちだが、確実に社会貢献をしている。

 ごとう候補に「なぜゴミ拾いをするのか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「自分の部屋にゴミが落ちていたら嫌じゃないですか。それと同じ感覚です。自分がいる空間はきれいな方がいい。だからゴミ拾いをしています」

 込山候補も、もう5年以上、継続的にゴミ拾いをしている。木下ようすけ候補も2年以上、新宿区内でゴミ拾いをしてきた。いずれも選挙に出るためではない。自分の人生の意味を考えた末、「地域のために役立ちたい」という感情からゴミ拾いをスタートしている。

 なかでも今回、木下候補は街頭演説は一切せずに、ひたすら選挙区内をゴミ拾いして歩くという選挙運動を展開した。極めて効率が悪い。「選挙に出なくてもできるだろう」と批判することも簡単だ。
 しかし、タスキをかけてゴミ拾いをしていると、いろんな人が声をかけてくれたという。選挙を知らせる啓発効果は十分にあったのだ。

「タスキを見て、『そういえば選挙だね』と気づいてくれる若者や、『ありがとう』と行ってくれる年配の方がたくさんいました。私は投票に行った人にクーポンを出すことで投票率95%を目指しています」(木下候補)

 100%ではない。その5%はなんなのだろうか。

「100%はさすがに非現実的だろうと思って、95%にしました。投票が義務化されている国では90%台の投票率の国も普通にあります。95%なら実現できると考えました」

 私が木下候補に会ったのは大雨の日。カッパを着た上からタスキをかけ、早稲田通りのゴミ拾いをしていた。この日は大きなゴミ袋3つをパンパンに集め、一度捨ててから4袋目に突入していた。ずっとゴミ拾いをするのはつらくありませんか?

「つらいです! もう、足がパンパンで」
 
 まさかの即答。それなのに、なぜゴミ拾いを続けるのか。

「ゴミを拾っているとみなさんが声かけてくれますし、僕自身も気持ちいいんです。なによりも、地域に貢献している感じがするんです」

 木下候補は11人中10位の523票で落選。供託金も没収されてしまったが、会社を辞めずに有給休暇を取って選挙に出られることを証明した。

 今回の都議選の投票率が低かったことはとても残念だ。それでも私は強く思う。

 意味のない立候補は、一つもない。

「投票率95%を目指しています」という木下候補。(撮影/畠山理仁)
「投票率95%を目指しています」という木下候補。(撮影/畠山理仁)

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』『コロナ時代の選挙漫遊記』(ともに集英社)などの著書がある。またその取材活動は『NO 選挙, NO LIFE』(前田亜紀監督)として映画化された。
公式ツイッターは@hatakezo

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