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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第40回では静岡県知事選挙告示日に、一騎打ちとなるふたりの候補を取材、レポートしました。

今回は引き続き昨日6月20日に投開票された静岡県知事選挙の最速レポート。結果はご存知の通り、現職の川勝平太知事の再選。しかし、現場でしかわからない最終盤の熱きバトルがあったのでした。

自民党本部12年ぶりの推薦候補は敗戦。投票率6.49ポイントアップの静岡県知事選挙で響いた言葉、「これをやったのは誰か? 川勝平太です!」

最終日に演説する岩井しげき候補。連日10カ所以上の演説を続けた。 (撮影/畠山理仁)
最終日に演説する岩井しげき候補。連日10カ所以上の演説を続けた。 (撮影/畠山理仁)

「川勝さんを批判していたけど、自民党の責任のほうが大きいんじゃないの?」

 やっぱり選挙は最終盤が盛り上がる。候補者の演説は熱を帯び、支援者の拍手や掛け声も大きくなる。演説の内容も、終盤になればなるほど面白い。残された時間が少なくなると、相手候補に対する言葉がどんどん厳しくなっていくからだ。
 前回、筆者は告示後最初の土日を取材した。そして今回は選挙運動最終日を取材した。もちろん両候補の演説を見たが、選挙戦序盤とは明らかに雰囲気が違った。激しいのだ。

 たとえば選挙戦序盤、岩井しげき候補は現職の川勝平太候補に言及する際、「知事の悪口を言うつもりはありません」と必ず前置きを入れていた。しかし、選挙戦最終日に聞いた岩井候補の演説からは、その枕詞がすっかり消えていた。

「どうしても今の県政、川勝知事の批判になりがちです! それは、あまりにも、あまりにも心がない言葉が多すぎる!」

 岩井候補が川勝候補に言及する際、必ず触れていたのが「静岡県内のワクチン接種率が全国的に低い」という問題だ。選挙戦序盤では「全国で下から42番目か43番目」という表現だったが、最終日にはこう変わっていた。

「ワクチン接種率が遅いことに対して、(※公開討論会の場で岩井候補に聞かれた川勝候補が)『お医者さんが少ないからあたりまえだ』と言ったその言葉は、私は許すことができない! 本当に目の前で皆様が苦しんでいる姿があるのに、その言葉を平気で言って切り捨てるというような優しくない県政は、私は県民は望んでいないと思います!」

 やはり選挙は最初から最後まで見てほしい。両陣営とも17日間という限られた選挙期間を全力で戦っている。そこで取り上げられる内容は、間違いなく今後の県政の課題になる。つまり、選挙が終わった後も有権者が注視すべきポイントが詰まっている。たとえ政治の事情に詳しくなくても、4年に1度の選挙戦を見れば、現在の政治が抱える課題がある程度わかる。つまり、選挙を機会に政治との関わりを始めることができるのだ。
 そしてできれば、候補者が語った内容について、周りの人と感想を語り合ってほしい。そこには様々な発見がある。たとえば今回、岩井候補の演説を聞いていた有権者の中にはこんなことを話す人もいた。

「岩井さんは自民党の参議院議員だった人で、今回は自民党本部の推薦を受けている。そもそも日本は他の国に比べてワクチン接種で大きく出遅れた。川勝さんを批判していたけど、自民党の責任のほうが大きいんじゃないの?」

 演説を聞きにきている人が必ずしも支援者とは限らない。それも選挙の面白いところだ。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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