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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第42回では7月4日に投開票された注目の東京都議会議員選挙のレポートでした。コロナや五輪問題で、政治への関心や不信感が高まっているはずが、その投票率は残念な結果に。

今回も投票日翌日の最速レポート。昨日7月18日投開票の兵庫県知事選挙は、5期20年間務めた井戸知事が出馬せず、20年ぶりに新人同士の戦いになっていた。現地だからこそ見えてきたこととは?

20年ぶりに新人同士の激戦! 兵庫県知事選挙は5人の候補をメディアがしっかり伝えていた。

斎藤候補の事務所横に用意された控室。斎藤候補は当確後、「バンザイ」ではなく「ガンバロー」を三唱。その後、控室からオンラインで姫路事務所の支援者に当確報告。いまだコロナ禍の選挙は続いている。(撮影/畠山理仁)
斎藤候補の事務所横に用意された控室。斎藤候補は当確後、「バンザイ」ではなく「ガンバロー」を三唱。その後、控室からオンラインで姫路事務所の支援者に当確報告。いまだコロナ禍の選挙は続いている。(撮影/畠山理仁)

「密」な状態でも律儀に「グータッチ」

「うぉ〜〜!」
「よっしゃ〜〜!」
「やった、やった、勝ったー!」

 7月18日日曜日、午後8時。神戸市内にある斎藤元彦事務所の外に集まった50人近い支援者たちが一斉に拍手をして大声を上げた。兵庫県知事選挙の投票箱が閉まると同時に、報道各社が「当確」を打ったのだ。
 事務所の中に入り切らない支援者たちは、事務所前の歩道で肩が触れ合うほど密集していた。全員がマスクをしていたが、新型コロナウイルス感染症が拡大して以降、久々に見る濃密で濃厚な喜びの声だった。

「勝ったで〜! ヨシッ、ヨシッ!」

 やたらと声の大きい人が、電話でも喜びの声を爆発させている。顔見知りを見つけた人同士が駆け寄って「ウェ〜イ!」とグータッチをしている。その輪はどんどん広がり、グータッチのリレーが始まった。まさに参加した者だけが味わえる「お祭り」騒ぎだ。
 支援者たちは17日間にわたる選挙戦での奮闘を互いに称え合い、とても嬉しそうだった。その輪の中に、当確直後の斎藤候補はいない。主役不在のまま仲間内で記念撮影が始まり、「イェ〜!」という喜びの声が夜の街にこだました。斎藤陣営の関係者以外はちょっと距離を取らざるをえないほどの盛り上がりだった。
 しかし、これだけ「密」な状態にあっても、誰もが律儀に「グータッチ」をしていた。不思議だ。コロナ禍での正しい接触とは何かを考えさせられる。
 斎藤事務所前の歩道は、午後8時前から事務所に入り切らない支援者であふれていた。私は金沢和夫候補の事務所前も通ってきたが、あきらかに斎藤事務所の方が人数が多かった。多くの人出による混乱を予想してか、斎藤事務所の前には警察官の姿もあった。そんな中、斎藤陣営の一部スタッフが淡々と歩道の交通整理をしていた。

「歩行者通りま〜す!」
「自転車通りま〜す! 道を開けてくださ〜い!」

 その声を聞くと、集まった支援者たちが歩道の端に移動し、真ん中に道を作る。通り過ぎる人たちは、人だかりに興味がなさそうなそぶりでそそくさと通り過ぎていく。
 祭りに参加している人としていない人の温度差が激しい。祭りに参加した人たちは、ものすごく楽しそうに盛り上がっている。しかし、参加していない人たちはうつむきがちに通り過ぎるだけで、振り返ることもしなかった。
 どこまでいっても交わらない。これが今回の兵庫県知事選挙を象徴する光景だった。

当確直後の斎藤事務所の盛り上がり。(撮影/畠山理仁)
当確直後の斎藤事務所の盛り上がり。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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