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1月末の市長選挙と市議会議員選挙の投票率は80%超え! 鹿児島県西之表市が自衛隊馬毛島基地(仮称)の建設計画で今も揺れている

選挙で反対派の市長が勝っても、そこで終わりとならないのが政治

 防衛省は昨年10月末から12月上旬にかけて、西之表市内各地で住民説明会を開いてきた。最初は住民の素朴な質問に対し、はぐらかしたり、答えなかったり、ごまかすような回答に終止していたと三宅さんは言う。

「最初、(防衛省が)私たちの質問に答えないのは(1月の)選挙結果を待っているんだなと思いました。議会選挙で賛成派が2名増えましたので、防衛省はもうガンガン来ると思います。推進派が勢いづいて、嫌がらせも続いています」

 嫌がらせとはどんなものなのか。

「反対の看板を掲げた建物に店舗を借りている若いご夫婦に対して、推進派のお客さんが『あれ(反対の看板)を外せ。外さないなら来ねえぞ』と言ったんです。お店を借りていた店主は大家さんに相談したんですが、大家さんは反対の看板を外す気がなかった。しばらくしてご夫婦は店舗から出ていってしまいました。
 反対派の看板を引っこ抜かれることもしょっちゅうあります。集会で発言した高校生のところに自民党の県議からなんだかんだと話がきたりもしました」

 すでに馬毛島の土地の8割以上を購入している防衛省側からすれば、今回の選挙は「自分たちが押した、と感じていると思う」と三宅さんは言う。

「市議選で実質7対7になったけれど、得票数の合計は推進派の方が多かった。現行の仕組みのもとで、鹿児島県知事や西之表市長に計画を止める権限はありません。法律的に止められるのは、あとは国会だけです」

 この日の集会の後、三宅さんも参加して防衛省前を通るデモ行進が行われた。

「馬毛島での基地建設、ハンターイ!」

 約70人が防衛省周辺を練り歩く。防衛省前では基地建設に反対するデモの主催者から防衛省職員に要請書が手渡された。たとえ選挙で反対派の市長が勝ったとしても、そこで終わりとはならないのが政治なのだ。

 3月25日には、西之表市議会で八板市長が「あまりにも住民が置き去りにされている」「米軍基地周辺の住民が苦しんでいる現状をよくみるべきだ」と表明した。それでも基地建設に向けた環境アセスの手続きは淡々と進んでいる。

3月27日、デモ主催者から防衛省職員に要請書が手渡された。(撮影/畠山理仁)
3月27日、デモ主催者から防衛省職員に要請書が手渡された。(撮影/畠山理仁)

防衛省の「のり弁」文書を知っていますか?

 私はこの問題について、賛成、反対の立場を超えて関心を持っている。それは選挙による意思の表明を行政がどうとらえるかという民主主義の根本的な問題だ。

 そのため私は塩田康一鹿児島県知事の記者会見にも参加して質問もした。しかし、もう一方の防衛省での記者会見にはいまだに参加できていない。防衛省が私の参加を認めていないからだ。

 私は今年2月3日、防衛省に対して情報公開請求を行った。求めたのは「防衛省における定例記者会見への参加資格、提出書類等について、防衛省大臣官房広報課が検討した内容、検討過程、検討結果がわかる一切の文書」だ。これを知ることで、糸口を見つけたいという思いだった。

 その回答が3月8日付けで送られてきた。封筒に入っていたのは「開示決定等の期限の特例規定の摘要について(通知)」というA4の一枚紙。通知によると、可能な部分については4月5日までに開示決定等を行い、残りの部分については7月5日までに開示決定等をする予定だという。

 あまりにも遅い。どんどん進んでいく基地計画の進捗からは考えられない遅さだ。

 実は私は2019年3月6日にも、防衛省に対して記者会見参加に関する情報公開請求を行った。請求したのは「防衛省大臣官房広報課報道室が防衛大臣記者会見にフリーランス記者の参加を検討していること示す文書」だった。

 このときも開示決定は延期された。その結果、同年5月22日にようやく届いた書類はページのほとんどが黒塗りにされた文書だった。延期して調整した結果が黒塗り。防衛省はとてものんびりした役所であることがよくわかった。

 基地問題は国防に関する問題だ。しかし、その周辺に住む国民にとっては切実な問題である。人々に対して「丁寧な説明」が本当になされているのかを私たちは注意して見ていく必要がある。

 そうした中で、自分たちの意見を表明する機会の一つに選挙がある。集会がある。署名活動がある。デモがある。「選挙で終わり」と関心を失ってしまえば、民意は尊重されなくなる。有権者には、選挙のときだけではない不断の努力が求められている。

2019年の週プレに掲載された畠山氏の記事。防衛書からの「開示文書」がすべて真っ黒。まさに「のり弁」である。
2019年の週プレに掲載された畠山氏の記事。防衛書からの「開示文書」がすべて真っ黒。まさに「のり弁」である。
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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