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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。


前回の第24回では、日本一の「保守王国」で知られる富山県を訪れ、10月25日投開票の富山県知事選挙の様子をレポートしました。

今回は、その投開票の様子をまたまた現地取材! 保守王国に起こった真実と、GoToトラベルキャンペーンを駆使した選挙旅についても紹介します!

保守王国・富山県知事選挙は新人候補の大逆転劇! 選挙取材のプロが「新田陣営で開票待ち」をした理由

半世紀ぶりの分裂選挙で勝利した新人の新田氏。(撮影/畠山理仁)
半世紀ぶりの分裂選挙で勝利した新人の新田氏。(撮影/畠山理仁)

ラグビーと同じく、選挙もルールを知れば面白くなる

「なりふりかまわぬ汚い選挙活動」
「気持ちの悪い、みっともない選挙戦」
「あんなズル賢いやり方があっていいのか」

 前回、この連載で富山県知事選挙告示日の模様を書いてから、私のもとにはそんな連絡がちょくちょく入るようになった。
 どうにも穏やかではない。連絡をくれた人の中には、「あれは選挙違反じゃないかと選挙管理委員会や警察にも相談に行ったが、彼らは全くやる気がない」と憤る人までいた。
 いったい、何のことを言っているのか。
 富山県の方々が私に訴えてきた内容をまとめると、おおむね次の3つだった。

1:候補予定者ともうひとりの弁士、二人の顔写真が入った演説会告知の「のぼり旗」が県内のあちこちに乱立した。最初は新田陣営だけだったが、石井陣営も続いた。
2:新田氏のシルエットを掲載したビラが新聞に折り込まれていた。あんなことをしてもいいのか。
3:国道に青いものを持っている人たちが大勢並んで車に手を振っていた。ブルーシートを広げている人たちもいた。みっともない。

 結論から言う。どれも法的にはセーフである。

 のぼり旗については、告示日前に設置されたものであれば撤去を求められない。
 ビラの実物も確認したが問題はなかった。公選法で認められた「確認団体」による活動だったからだ。なぜ写真ではなくシルエットかといえば、公職選挙法を守るためである。
 公職選挙法では、確認団体のビラには「氏名や氏名が類推されるような事項」を掲載することができない。具体的に言うと、写真や似顔絵はNGだ。しかし、不思議なことに、シルエットならOK。肩書を書くことも問題ないことになっている。
 選挙のことを知らない人は不思議に思うだろう。しかし、本当だ。
 だから党派を問わず、全国各地のいろんな選挙で、この種のビラが使われてきた。「二人の顔写真が載ったのぼり旗」も富山県外の選挙で見たことがある。ポスターの場合は撤去しなければならないが、告示前に設置された「のぼり旗」ならそのままでもいいからだ。
 私が「よその選挙もみてほしい」と言っているのはそういうことだ。他人の選挙から学ぶべきことはたくさんある。
 ルールを破って選挙違反をするのは悪いことだ。しかし、法律の範囲でやることは問題がない。それは「モラルがない」と批判されるリスクも背負っているからだ。

 しかし、有権者が選挙に興味を持っていなければ、その作戦が「モラルがない作戦」なのかどうかも判別できない。場合によっては「やったもん勝ち」を見過ごすことにもなる。
 だから私は選挙に関心を持ってほしいと言い続けている。ラグビーのルールを知れば面白く観戦できるように、選挙のルールを知れば面白く政治に参加できる。
 もし、現在のルールに不備があると考えるなら、手続きに則って改正すればいい。それが民主主義社会である。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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