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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。

前回の第18回は東京都知事選挙を経て、コロナウイルス感染者数が増加する中、改めて思う「よい政策の取り上げ方」についてのお話でした。

今回は、7月12日投開票の鹿児島知事選挙について。

7月12日投開票の鹿児島知事選挙をきっかけに、定例記者会見のあり方が変わった!

塩田康一新鹿児島県知事の就任会見。実は筆者がここに参加できたことは大きな変化だった。(撮影/畠山理仁)
塩田康一新鹿児島県知事の就任会見。実は筆者がここに参加できたことは大きな変化だった。(撮影/畠山理仁)

選挙に行かないことで、あなたの力はどんどん無力化される

「自分の一票は無力だ」「自分が投票したところで何も変わらない」
 そう考えて選挙に行かない人がいる。
 本当にそう思っているのかどうかは本人にしかわからない。しかし、「選挙に行かない理由」としては横綱級の知名度を誇っている。

 選挙権は一人ひとりが持つ権利だ。だから投票に行かない自由ももちろんある。収入の4割以上を税金や社会保障費として支払いながら、政治のあり方に注文をつけないのも個人の自由である。
 私自身は棄権や白票は極めてもったいない行為だと思っている。だから選挙にこだわる。
 しかし、「絶対に選挙に行かない」というのもその人の考え方であり人生だ。尊敬するかと問われればためらうが、個人の意思は尊重しなければならない。

 ただし、大事なことは何度でも強調しておく。選挙に行かないことで、あなたの力はどんどん無力化される。選挙に行く人たちから選ばれた政治家が、選挙に行かないあなたに優しくする可能性は極めて低いからだ。
「公人なんだから、全体の奉仕者にならなければならない」
 そう主張して政治家を叱咤激励するのは有権者が持つ権利だ。どんどん声を上げたらいい。しかし、その前に、政治家を選ぶ権利を行使した方がずっとうまくいく。有権者の声に耳を傾けない政治家を選んではいけない。
 選挙に行く人たちは「選挙に行かないあなた」に対して厳しいことは言わないはずだ。
「まったく、そうよねえ。私たちの一票じゃあ、何も変わらないわよねえ」
 表ではそう言いながらも、自分はちゃんと投票に行っている。可能であれば自分が応援する候補者に投票するように働きかける。
 働きかけが成功すればしめたもので、失敗しても痛手はない。結果としてあなたが選挙に行かなければ、相対的に選挙に行く自分たちの影響力が大きくなることを知っているからだ。投票に行かないと聞いて「しめしめ」と思う人もいることを知ったほうがいい。

 選挙は自分の意見を表明する貴重な機会だ。その機会を最大限に活用できた人たちが選挙では勝っている。一方、興味を持たない人たちは負け続ける。ひどいときには、負けていることにさえ気づかない。
 選挙に行かないことは、決して格好いいことではない。ぜひ参加して意見を表明したほうがいい。選挙運動を悪あがきとバカにする人もいるかもしれないが、何もしなければ現実の前に白旗を揚げるだけになる。
 これが選挙に行かないことの意味だ。
 私は優しいから事実を言っている。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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