2021.2.1
踊らない! 歌わない! 戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君はなぜ当選できたのか?
「誰も政策のことを聞いてくれないんですよね」
異色の市議が誕生したことは市政にも刺激を与えるだろう。しかし、今回の選挙戦を取材していて、一つ気になったことがある。それは選挙戦中にスーパークレイジー君本人から聞いたこんな言葉だ。
「今回は本気で当選を目指しているから、政策も一生懸命考えて書いたんです。国会議員の人にもアドバイスをもらったりして。政策を聞かれても答えられるよう、しっかり考えて書きました。できないことではなく、自分ができることを書きました。でも……」
でも?
「誰も政策のことを聞いてくれないんですよね」
たしかにそうだった。候補者本人がビラを手渡すとみんな受け取る。でも、有権者の目はビラには向かない。目の前にいる候補者本人に注がれていた。
「政策とか聞かなくて大丈夫ですか?」
候補者本人がそう言うと、多くの有権者はこう言った。
「大丈夫! スーパークレイジー君に入れるよ!」
「今回、結構ちゃんと政策を書いてるんですよ」
「大丈夫、大丈夫! 君を応援する!」
有権者が誰に一票を投じるかは自由だ。しかし、決して忘れてはいけないことがある。それは、選挙の度に有権者は試されているということだ。
選挙に行く人、行かない人、どちらもリスクを背負う。誰もが政治の影響から自由になることはできないから当然だ。そして万が一、有権者のために働かない政治家を選んでしまった場合、その責任は有権者が背負わなければならない。
だから選挙の際には、大切な一票を責任をもって投じたほうがいい。政治家が間違った方向に行きそうになった時、きちんとコミュニケーションを取れる相手なのかも見極めたほうがいい。
選挙は投票して終わりではない。候補者も当選して終わりではない。有権者と政治家の間に適度な緊張関係があれば、政治はきちんと機能するはずだ。私はそれこそが正しい民主主義だと思っている。
(文中敬称略)