よみタイ

踊らない! 歌わない! 戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君はなぜ当選できたのか?

電話で諭された若者はしっかり選挙を手伝っていた

「都知事選とはぜんぜん勝手が違うんスよね。都知事選のときは歌ったり踊ったりしてましたけど、今回の市議選はパフォーマンスはやりません。地道にビラ配りと演説をしています。絶対に当選したいし、議員になって戸田市のために働きたいんで」

 市議選の序盤に戸田公園駅を訪ねると、彼はビラを手にしながらそう言った。そして、夜は彼ならではの選挙戦(スピーカーなし)を展開していることも教えてくれた。

「戸田って、夜遊ぶところがないんですよ。だから隣の蕨市のドン・キホーテやラウンドワン、川口市とか、戸田の若者が遊びに行くところに出かけてます。この前なんて、『ポスター貼りたいから会おう』って言われて居場所を教えたら、駐車場でフルスモークガラスの車3台に囲まれました。『やべえ、ハメられた!』って思ったら、車から出てきた若者が『本気で応援します!』って言ってくれました」

 こんな夜回りをしている候補者はなかなかいない。深夜に会う若者たちは選挙に行った経験がない人も多く、どう応援していいかわからないようだった。夜遅くまで選挙を手伝うはずだったのに、早めに活動を切り上げて飲みに行ってしまう人もいた。

 そんな若者から電話がかかってきた時、スーパークレイジー君は電話口でこう言った。

「他の子たちは一生懸命やってくれています。ビラだって全部折ってくれたし、証紙だって全部貼ってくれた。そんな子たちをおいて1人で飲みに行っちゃうなら、もう来てもらわなくていいっすよ。みんな本気で当選する気でやってるんで」

 もちろんボランティアだから強制はできない。それでもスーパークレイジー君はすぐに電話を切らない。長電話の様子から、彼がどれほど真剣に仲間たちと選挙戦を戦っているかが伝わってきた。また別の日に活動を見に行くと、電話で諭された若者はしっかり選挙を手伝っていた。

「パフォーマンスはやりません。地道にビラ配りと演説をしています」と熱く語った候補者の背中。(撮影/畠山理仁)
「パフォーマンスはやりません。地道にビラ配りと演説をしています」と熱く語った候補者の背中。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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