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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

踊らない! 歌わない! 戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君はなぜ当選できたのか?

たくさんの子どもたちから求められ「最終日に一回だけ踊ることにしました」

 スーパークレイジー君と聞くと、彼が都知事選で見せた歌や踊りのパフォーマンスを思い出す人も多いだろう。実際、街頭活動の場で「一緒に踊ってほしい」と若者からリクエストされる場面を私は何度も見た。しかし、彼はそうした申し出を丁寧に断っていた。

「今回の戸田市議選ではパフォーマンスはやらないつもりです」

 当初は頑なだった。それを解きほぐしたのは、候補者を追いかけ回す子どもたちだった。

「あまりにもたくさんの子たちから『いつ踊るの』『踊って』って頼まれちゃって。だから最終日に一回だけ踊ることにしました」

 選挙戦最終日の1月30日土曜日17時30分。戸田公園駅西口には子どもたちを含めて約200人が集まった。そこにスーパークレイジー君が黒塗りのベンツで到着すると歓声が上がった。音楽に合わせて一緒に踊る人もいた。どこまでがスタッフで、どこからが聴衆なのかがわからない。とにかくみんな楽しそうだ。

 踊りが終わると、スーパークレイジー君は「子どもたちにもわかる言葉で」話した。

「スーパークレイジー君の絵本の会とかやったら、子どもを集める自信があるんです。たぶん、僕以上に集められる人はいないんじゃないかなーって。子どもの教育のことだったら、自分が少しは役に立てるんじゃないかと思っています。僕にも子どもがいますし。でも本当に、今回は子どもたちに助けられた選挙でした。勉強のためにいろんな選挙を見てきましたが、こんな選挙は見たことないです」

 たしかに特別な選挙だった。投開票日の夜、開票所の前には中学生たちが選挙結果を見に来ていた。母親と一緒に出待ちをする10代もいた。彼らはスーパークレイジー君が当選したことを知ると、力強くガッツポーズをして家へ帰っていった。

「ちゃんと帰れよーって言ったんですけどね。やっぱりこんな選挙は見たことない」

最終演説の人だかり。若者の注目を集めることは悪いことではないはずだ。(撮影/畠山理仁)
最終演説の人だかり。若者の注目を集めることは悪いことではないはずだ。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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