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踊らない! 歌わない! 戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君はなぜ当選できたのか?

戸田市のポテンシャルが彼の当選を後押しした!

 私が戸田市議会議員選挙に興味を持ったのは2020年9月のことだ。きっかけは、スーパークレイジー君からの電話である。

「来週、戸田市に引っ越します。来年1月の市議選に出るつもりです」

 この電話の2カ月前、彼は東京都知事選挙に立候補し、22人中10位で落選していた。私は彼が都知事選の立候補準備で東京都選挙管理委員会を訪れたときから取材を始め、出馬会見、選挙中、選挙後も取材を続けた。彼は折に触れて選挙に出る理由を語っていた。

「アメリカ大統領選みたいに楽しく盛り上がれる選挙を日本でもやりたい」
「若者の投票率が低すぎる。少しでも興味を持ってもらって投票率を上げたい。今まで選挙に行かなかった人たちに興味を持ってもらえるのは、自分だからできることだと思う」
「今回がダメでも、当選するまで選挙に出続けます」

 彼がこの時の都知事選で獲得したのは1万1887.698票。得票率は0.19%にとどまり、供託金300万円はすべて没収された。通常の候補者であれば、二度と立ち上がれないほど打ちのめされる数字だ。

 しかし、彼は違った。「選挙に出続ける」という宣言どおり、落選直後から次の選挙に向けて動き出していた。しかし、なぜ戸田なのか。

「親戚がいて、何度も遊びに来ていたので。絶対に選挙で当選したいんで」

 それだけの理由で本当に引っ越すのかと私は思った。しかし、自身の複雑な生い立ちも自ら開示する彼が、わざわざ嘘を言うとは思えない。だから私は2020年9月の時点で今年1月の戸田市議選を取材すると決めていた。

 市議選を取材するにあたり、私は戸田市の人口構成や過去の選挙の記録を調べた。すると、人口約14万人の戸田市の特徴が見えてきた。

 とにかく若い。生産年齢人口が多い。人口のボリュームゾーンは、スーパークレイジー君と年齢の近い30代〜40代だ。

 4年前の市議選のデータを見ると、年代別投票率は「75歳〜79歳」が1位(64.81%)だった。しかし、その人数は2840人。一方、投票に行った「人数」が多い世代は1位が「45歳〜49歳」で4630人(投票率39.51%)、2位が「40歳〜44歳」で4419人(投票率35.83%)。投票率は低くても、40代が他の世代を人数で圧倒していた。

 もし、この世代の票を掘り起こすことができれば面白い結果が出るかもしれない。私がスーパークレイジー君の当選に驚かなかった背景には、そんな戸田市の選挙事情があった。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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