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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

踊らない! 歌わない! 戸田市議会議員選挙で、スーパークレイジー君はなぜ当選できたのか?

当選決定直後。「この街で認められるために、市政に関することでもっとファンを増やしていきたい」と抱負を語ったスーパークレイジー君。(撮影/畠山理仁)
当選決定直後。「この街で認められるために、市政に関することでもっとファンを増やしていきたい」と抱負を語ったスーパークレイジー君。(撮影/畠山理仁)

「誰も政策のことを聞いてくれないんですよね」

 異色の市議が誕生したことは市政にも刺激を与えるだろう。しかし、今回の選挙戦を取材していて、一つ気になったことがある。それは選挙戦中にスーパークレイジー君本人から聞いたこんな言葉だ。

「今回は本気で当選を目指しているから、政策も一生懸命考えて書いたんです。国会議員の人にもアドバイスをもらったりして。政策を聞かれても答えられるよう、しっかり考えて書きました。できないことではなく、自分ができることを書きました。でも……」

 でも?

「誰も政策のことを聞いてくれないんですよね」

 たしかにそうだった。候補者本人がビラを手渡すとみんな受け取る。でも、有権者の目はビラには向かない。目の前にいる候補者本人に注がれていた。

「政策とか聞かなくて大丈夫ですか?」

 候補者本人がそう言うと、多くの有権者はこう言った。

「大丈夫! スーパークレイジー君に入れるよ!」
「今回、結構ちゃんと政策を書いてるんですよ」
「大丈夫、大丈夫! 君を応援する!」

 有権者が誰に一票を投じるかは自由だ。しかし、決して忘れてはいけないことがある。それは、選挙の度に有権者は試されているということだ。

 選挙に行く人、行かない人、どちらもリスクを背負う。誰もが政治の影響から自由になることはできないから当然だ。そして万が一、有権者のために働かない政治家を選んでしまった場合、その責任は有権者が背負わなければならない。

 だから選挙の際には、大切な一票を責任をもって投じたほうがいい。政治家が間違った方向に行きそうになった時、きちんとコミュニケーションを取れる相手なのかも見極めたほうがいい。

 選挙は投票して終わりではない。候補者も当選して終わりではない。有権者と政治家の間に適度な緊張関係があれば、政治はきちんと機能するはずだ。私はそれこそが正しい民主主義だと思っている。

(文中敬称略)

戸田市議会議員選挙当選直後の動画はこちらから!(2021年2月1日撮影)

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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