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第二次安倍政権発足から7年3カ月以上! 首相会見質問の回答から読み解く3つの重要事項

自民党改憲草案の論拠を揺るがす答弁

 実は私はこの質問に、もう一つの意味を込めていた。それは「新型コロナ禍での『国政選挙』をどうするのか」という点である。

 私が首相会見で質問した時、新型コロナ禍で行われる選挙の中には、初めての国政選挙(静岡4区補選)が含まれていた。首相がそこに言及するかどうかを知りたかった。
 ちょっと難しいかもしれないが、大切なことなので詳しく説明する。

 東日本大震災時に作られた「特例法」のような形で延期が可能なのは地方選挙だけだ。
 これは地方議員や地方の首長の任期が「地方自治法」と「公職選挙法」で規定されているからである。

 一方、衆議院議員および参議院議員の任期は「憲法第四十五条及び第四十六条」で定められている。だから、一口に「新型コロナ禍での選挙」と言っても、地方選挙と国政選挙では大きく様相が異なる。国会議員の任期や選挙は、簡単に延長できないのだ。
 その前提となる大切な質疑を紹介したい。

 2011年11月2日、近藤三津枝衆議院議員(当時・自民党)が「緊急事態に対する現行憲法の問題に関する質問主意書」を提出した。近藤議員の質問部分は次の通りである。

「今回のような大災害が国政選挙の公示日の直前に発生した場合、『東日本大震災に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律』のような法律を制定することにより、国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長することは、日本国憲法に照らして許されるかどうか、政府の見解如何」

 これに対する政府答弁の要点は次の通り。

「特例法を制定することにより『国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長すること』は、できないものと考える」

 この政府答弁は、自民党が提案する憲法改正草案の中にある「緊急事態条項」にも色濃く反映されている。
 同草案の緊急事態条項には、内閣総理大臣によって緊急事態宣言が発せられた場合、国会議員の任期と選挙期日の延長ができることが盛り込まれているからだ。
 その意味で、4月17日の安倍首相の答弁は重要だった。
 安倍首相は自ら「静岡4区補選」の例を挙げ、「民主主義の根幹である選挙は不要不急のものではない」「基本中の基本である選挙は、できる限り実施していく」と表明したからだ。

 もう少しわかりやすく言おう。

 安倍首相は「今後の選挙」に言及しつつ、「基本中の基本であるこの選挙については、できる限り実施していく」と発言した。これは自民党の改正草案にある「国会議員の任期延長」の論拠を揺るがす発言なのだ。
 安倍首相自身も再三発言している通り、今回の新型コロナ禍は「国難」である。しかし、静岡4区補選が予定通り実施されたことにより、「『国難』においても『国政選挙が実施された』」という前例ができてしまった。

「それならべつに緊急事態条項はなくてもいいんじゃない?」
 という声が上がっても不思議ではないのだ。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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