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第二次安倍政権発足から7年3カ月以上! 首相会見質問の回答から読み解く3つの重要事項

20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。
 前回の第12回では、コロナ禍の4月26日に投開票された衆議院静岡4区補欠選挙の舞台裏をレポートしました。 今回は、その補選の投開票に先立つ4月17日に著者が出席、質問した安倍首相会見についてのお話です。

第二次安倍政権の発足後、初めて首相会見で質問する著者。(撮影/小川裕夫)
第二次安倍政権の発足後、初めて首相会見で質問する著者。(撮影/小川裕夫)

安倍首相に「選挙」のことを直接聞いた

 首相官邸で行われた安倍晋三首相の記者会見に参加して、直接、安倍首相に「選挙」に関する質問を当ててみた。

「なんでお前が首相会見の場にいるのか?」

 そんな疑問を抱く読者もいると思う。その点については、私も書きたいことがある。しかし、ここは選挙の連載だ。ひとまず、選挙以外のことは脇に置いて話を進める。

 私は4月17日に行われた首相会見で、次のように質問した。手前味噌だが、大切な質疑なので、私の質問から書き起こしてみたい。

「緊急事態宣言下での選挙についてうかがいたいと思います。コロナウイルスの感染拡大が続く中でも、選挙は延期されておりません。
 各選挙管理委員会では、期日前投票の推奨、投票所への消毒液の設置など、いろいろ対策を採っていますが、感染拡大が進む中で行われた選挙の投票率は軒並み下がっています。
 緊急事態宣言発令(4月7日)から10日が経ちますが、有権者が安心して投票する権利を保障するための施策、例えば、郵送投票の拡充、それから、インターネット投票の検討や選挙の延期を検討するなどのお考えはありますでしょうか」

 一つ断っておくと、私は事前に質問内容の通告をしていない。まさか自分が質問者に指名されるとは思っていなかったが、せっかくの機会なので「選挙」について聞いたのだ。
 これに対する安倍首相の答えは次の通りだ。

「まず、この状況の中で選挙をどうするかという話でございました。例えば、韓国では先般、いわば総選挙が行われたわけでございますし、また、延期したところもあるわけであります。

 現在、日本においては静岡の衆議院の補欠選挙(※筆者注・4月14日告示、4月26日投開票の静岡4区補欠選挙)は行っています。
 民主主義の根幹である選挙については、言わば『不要不急のものではない』という判断の中において、感染リスクを避けながら実行させていただいています。
 ただ、今お話があったように、インターネット投票とかいろいろな手段がありますよね、というお話がありました。
 ただ、今の法制下ではそれはできないのでございますが、今後こうしたことを契機に、我々も、例えば診療においても、今度、初めて、対面ではない形で診察をしていただくことになりました(※筆者注・オンライン診療のこと)。

 こういう大きな変化の中で、選挙もどう考えるべきかということについては当然、議論していく必要が、これはなるべく国会において議員の皆さんが議論していただくべきことだろうなと、こう思っています。
 なるべく投票率を上げる努力はこういう中でもしなければいけないし、今後どうすべきかということについては、基本的には、基本中の基本であるこの選挙については、できる限り実施していくこととしたいと、こういうふうに考えています」

 私は2010年3月26日から首相会見に参加し始めた。当時の民主党政権時には、何度か質問者として指名されていた。しかし、2012年12月26日に第二次安倍政権が発足してから7年3カ月以上、会見で挙手をしても当てられることはなかった。私が自民党政権下の首相会見で質問したのは初めてだった。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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