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「東京防災オリンピック」「ベーシックインカム」……未来を予見する政策を訴えた候補者たち

20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。 前回の第10回では、コロナウイルス問題の中で行われた熊本県知事選挙の現地取材ルポをお伝えしました。 今回も、引き続きコロナ禍で延期もされない選挙で考えておきたいことをお伝えします。

コロナ問題以後の選挙では投票率は軒並み下がっている。(撮影/畠山理仁)
コロナ問題以後の選挙では投票率は軒並み下がっている。(撮影/畠山理仁)

新型コロナで五輪は延期されても選挙はされない

 新型コロナウイルスの感染拡大により、東京オリンピック・パラリンピックは1年延期されることになった。

 しかし、選挙は一つも延期されていない。
 4月7日には、東京を含む7都府県に緊急事態宣言が出た。
 それでも延期されそうな選挙はない。

「こんな危機のさなかに選挙をやるのか」

 そう思う人も多いだろう。私もそう思う。だから過去2回(第9回第10回)に続けて今回もわざわざ「延期されない」と強調する。予定通り行なわれていることをみなさんに知らせたいからだ。

 なにしろ、この間に行なわれた選挙の投票率は軒並み下がっている。貴重な一票を捨てるのも有権者の自由だが、それだけとは考えにくい。新型コロナウイルスが原因で、選挙に意識が行かない有権者、投票所から足が遠のく有権者がいることは容易に想像できる。

 そろそろ政治の側が「有権者が投票に行きやすい方策」を考えてもいい頃だ。しかし、それでも選挙は延期されない可能性が高い。

 筆者がそう考えるのには理由がある。安倍晋三総理大臣が「選挙の延期」に否定的な考えを表明しているからだ。
 この意見表明は、緊急事態宣言を出す方針を固めた後の参議院議院運営委員会でなされた。つまり、阪神淡路大震災や東日本大震災の時のような「特例法」を作って選挙を延期する考えがないということを示している。

 公明党は緊急事態宣言が出されると、地方選挙延期の声を上げ始めた。しかし、安倍内閣の一員である高市早苗総務大臣は、4月10日の記者会見で次のように述べている。

「現行制度のもとでは、緊急事態宣言が出された場合であっても、公職選挙法の規定に基づき選挙は執行されることとなります。選挙は住民の皆様を決める民主主義の根幹をなすものですから、任期が来たら決められたルールのもとで次の代表を選ぶというのが民主主義の大原則でございますので、これは不要不急の外出には当たらないとされています」

 その上で、高市大臣はこう続けた。

「有権者の皆様におかれましては、是非ともご自身の予防対策もしていただいた上で、投票への参加をお願いできたらと思っております」

 もちろん、延期される可能性もゼロではない。しかし、こうしたやりとりが行なわれている間にも選挙は次々と告示され、粛々と執行されている。
 4月12日には目黒区長選挙も告示された。4月19日には福生市長選挙が告示される。6月18日告示・7月5日投開票の東京都知事選挙もおそらく予定通りだ。
 有権者はそのつもりで行動したほうがよい。

小池東京都知事の会見。記者は距離をとって取材している。(撮影/畠山理仁)
小池東京都知事の会見。記者は距離をとって取材している。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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