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脱サラは初代iPad発売と同じ2010年4月。改めて考える、この12年の仕事とデュアルライフ

コロナ禍によってもたらされた、フリーランサーにとっては仕事をやりやすい状況

さらにここのところ、社会は変化のスピードを上げています。
2019年4月に実行段階に入った政府肝いり政策である働き方改革が、コロナ禍によって否応なしに急加速させられてからの変動は、“革命”と呼んでもいいのではないかとさえ思います。

コロナによって多くの人々が強制参加させられたリモートワークは、結果的に壮大な社会実験となりました。
そして人とリアルで対面しなければできない仕事というのは意外と少ないことが、はからずも証明されます。

世の中の大半の人がそうした認識を持ってくれるようになれば、フリーランスのデュアラー(二拠点生活者)である僕のような人間は、ますます仕事がしやすくなります。
現在の僕の仕事でリモート化が不可能なのは、雑誌や書籍に掲載する写真撮影の立ち会いくらいで、その他の仕事はおおよそすべてリモートで処理できます。
今でも打ち合わせや取材はやっぱり対面でという人も少なくはないですが、“対面が難しければリモートで”という選択肢があるのとないのとでは大違いです。
ましてや、僕の今の仕事の中心である原稿書きなどは、パソコンどころかタブレットひとつあれば、いつでもどこでも100%の仕事をすることができます。

山の家の仕事机はシンプル。でも最近はソファに転がってiPadで仕事することの方が多い
山の家の仕事机はシンプル。でも最近はソファに転がってiPadで仕事することの方が多い

ところで、僕の独立後12年間の成績を収入という観点で測ると、良い年もあれば全然ダメな年もあり、かなりのジグザグっぷりです。
こんな仕事でもコロナ禍の影響は少なからずあり、ここ2年はなかなかシビアな低空飛行をしています。
収入の面でサラリーマン時代と大きく違うのは、こんなふうに世の中の荒波をモロにかぶること、そして出世によるベースアップや業績向上による賞与を期待できないということでしょう。

でも、そこはあまり気にしていません。ええ、痩せ我慢ではなく。まあヤバいっちゃあヤバいんですが、本当に大丈夫だと思っています。
そもそも今の僕にとって、働くことのモチベーションは収入増ではありません。
もちろんある程度の彩りある生活をしていくためには、それなりの収入が必要です。
でも、身に余る大きな収入と引き換えに、家族と過ごす時間だったり、一人でじっくりものを考える時間だったり、趣味を存分に楽しむ時間だったりを犠牲にしなければならないのであれば、それはいかがなものかと思うのです。

今日明日の食べ物を買うために働かなければならない発展途上国ならいざ知らず、我々が暮らす日本のような超先進国(一時期の輝きは失われているとしても)では、幸せを感じる基準が多様化していて、出世して大きな収入を得ても主観的な幸福度は上がりにくいことが知られています。
その逆もしかりで、出世やそれに伴う収入増と縁を切ったからといって、不幸だと感じやすいわけではないのです。

僕の場合、今のようにフリーで受注する編集&原稿仕事であれば、いつまでも続けられると思っています。
別に富豪にならなくても良いから、死ぬまで食うに困らない程度の一定収入さえあればいい。
自然豊かな環境の中に建つ小さな山の家で、愛する家族とワンコと友達、そして本や漫画やレコードに囲まれながら持続可能な暮らしができるならば、それ以上に望むものなどあるものかとさえ思います。

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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