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どうしても欲しい山のお宝、“シカの角”ってどこを探せば見つかるの?

東京生まれ、東京育ちの“シティボーイおじさん”が、山中湖畔に中古の一軒家を購入! 妻、娘、犬とともに東京←→山梨を行き来する2拠点生活=「デュアルライフ」をはじめました。 音楽や読書など山の家での趣味活動から、仕事やお金のやりくりといった現実的な話題まで、 著者が実体験したデュアルライフのリアルを綴ります。 別荘暮らしが優雅な富裕層の特権だったのはもう過去の話。 社会環境や生活スタイルが大きく見直されている今、必読のライフエッセイです。

探しものはなんだと思いますか?

山中湖村でずっと探しているものがあります。
それはとても見つけにくいもので、カバンの中やつくえの上を探してもあるはずはなく、見つかるとしたら野山。
シーズンは、春がベストと言われています。
タイトルでもうバレてるし、もったいぶっても仕方がないのでとっとと発表すると、僕の探しものは“シカの角”です。
毎年生え変わるため、春の野にぽとんと落ちているという雄鹿の角がどうしても欲しいのです。

山中湖村では、本当にしょっちゅう野生のシカを見ます。
デュアルライフをはじめた当初は、見かけるたびにキャアキャアと盛り上がりましたが、野良猫よりも頻繁に見られるので、もはや僕も家人も反応はだいぶ薄くなり、最近は「あ、いるね」という程度です。
にもかかわらず、デュアルライフをはじめて5年になるのにまだ一本の角もゲットできていません。

群れているのは、たいてい雌鹿と子鹿(2017年11月撮影)。
群れているのは、たいてい雌鹿と子鹿(2017年11月撮影)。

もっとも民家近くで見かけるのは角がない雌鹿や子鹿が多く、立派なブツを持っている雄鹿には、そもそもほとんど出逢えません。
雄鹿は基本的に単独行動のうえ警戒心が強いので、山奥を中心に生活しているのでしょう。
だから角を見つけるには、山に登らなければ。
それもやわな登山道ではなく、道なき道に踏み入らなければなかなか見つからないと聞きます。
そこまでワイルドではない僕は、「じゃあ無理やね」とハナからあっさり諦めていたのです。

ところが数年前のある日のこと。
山中湖村に永住し、フォトギャラリーを開いているお隣のプロカメラマンさん宅へ遊びにいったら、リビングのキャビネットに立派なシカの角が飾られていました。
惚れ惚れと見ている僕にカメラマン氏は、「ああ、それね。佐藤さんちの前に転がってたの」と、のたまうではありませんか。

確かに、我が家の庭は獣道。
山から下りてくるシカにとってちょうどいい通り道らしく、庭にはよくフンが落ちているし、足跡もたくさん残っています。
夜、風呂上がりにテラスで星でも見ようかなと思ってドアを開けると、庭の花のツボミを、今まさにむしゃむしゃ食べているヤツと目が合ったこともあります。
角のあるレアな雄鹿もきっと、人の気配がなくなる深夜には山からやってきているのでしょう。

花を食べに来たシカ(2020年4月撮影)。
花を食べに来たシカ(2020年4月撮影)。
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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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