2022.4.27
脱サラは初代iPad発売と同じ2010年4月。改めて考える、この12年の仕事とデュアルライフ
雇われの身から逃れたが、仕事道具のケーブルでがんじがらめだった10年前
僕が勤めていた会社を辞めてフリーランス野郎になったのは前回の寅年、12年前の2010年春のことでした。
当時は、2008年秋に起きたリーマンショック後の世界同時不況による景気後退局面が続いていましたが、経済のことはよく分からないボンクラの僕ですから、そこは独立とあんまり関係がありません。
いや、心の中で「なんか世の中アタフタしてるから、どさくさに紛れて脱サラしーちゃおっ」とうっすら考えていたふしはあります。
独立当初の仕事環境は、今とはかなり様相が異なりました。
無線LANは普及段階でしたが、なんだか頼りなさげで信用できず、仕事でネットを使うならしっかり線でつないだ方が確実だと思っていました。
Wi-Fiという文字もちょくちょく目にするようにはなってはいたものの、「なんて読むんだっけ? ウィフィ?……じゃなかったな。人前で口に出すのはやめよう」などと思っていたものです。
ですから、自宅の一室をワークスペースに仕立てあげた際には、LANケーブルにつないだパソコン、そのパソコンとケーブルでしっかりつないだプリンター&スキャナ&外付けハードディスク、そしてFAX付きの有線電話を並べて仕事に臨んでいました。
ちなみに初代iPadの発売は、僕の独立記念日と同じ2010年4月です。
新しもの好きな僕はすぐに飛びつきましたが、セルラーモデルではなくWi-Fiモデルを選んだため、外ではなかなかネットにつなげることができず、ほとんど家の中専用機でした。

しかしそれからわずか数年間で、大きな変化が起こります。
ノマドワークという概念と言葉が広まったのは2013〜2014年のこと。
世の中の公衆無線LANスポット、いわゆるアクセスポイントが加速度的に増加し、外出先でネットを使いやすい環境が整いました。
コワーキングスペースという変てこな新語に耳が慣れるのにも時間はかかりませんでしたし、カフェでMacBookを開き、スマートに仕事をこなす人をしばしば目にするようになったのもこの頃です。
考えてみると、Wi-Fiとクラウドとタブレットの普及がなければ、もしかしたら僕はデュアルライフをはじめていなかったかもしれません。
いくらフリーランサーと言えども、自宅の自室という各種ケーブルでがんじがらめの仕事専用空間がなければまともに働けなかったとしたら、東京をしばしば離れることなど考えられないのですから。
別荘というのが、昔はお金持ちの代名詞だったのも当然です。
現役世代でも会社で高い地位にいる人ならば、いっとき完全に仕事から離れて優雅な週末時間を過ごすことができたのでしょう。
それにもしも緊急の仕事が発生しても、電話一本で部下を動かして処理することができたり、お抱え運転手付きのハイヤーを飛ばして東京に戻れたりする人でなければ、安心して別荘暮らしなどできなかったはず。
我が家のような貧乏暇なしの庶民世帯がデュアルライフを実現できたのは、ITの進化によるところも大きいのだと思います。
なにしろ今や、東京の家から山の家に移動するとき、持っていく仕事道具といえばiPad airとApple Pencilだけですからね。
ありがたや、ありがたや。
