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“富士山噴火”は、ダイヤモンド富士にも勝る一大イベント!?

東京生まれ、東京育ちの“シティボーイおじさん”が、山中湖畔に中古の一軒家“山の家”を購入! 妻、娘、犬とともに東京←→山梨を行き来する2拠点生活=「デュアルライフ」をはじめました。 音楽や読書など山の家での趣味活動から、仕事やお金のやりくりといった現実的な話題まで、 著者が実体験したデュアルライフのリアルを綴ります。 別荘暮らしが優雅な富裕層の特権だったのはもう過去の話。 社会環境や生活スタイルが大きく見直されている今、必読のライフエッセイです。 前回は、富士五合目まで愛車を走らせ、今シーズン初の雪にタッチ。冬の便りをお届けしました。 今回も、富士山についてのお話。巷では「富士山噴火Xデー」近しと警鐘を鳴らす声も聞かれますが……。

朝は紅富士、午後はダイヤモンド富士。ダイナミックな富士山イベントが満喫できる季節

2021年11月上旬某日の午前6時。
セットしていたiPhoneのアラームが鳴っても、なかなか暖かい布団から出る気にはなりません。
この時期、山中湖村の明け方の外気温は0度前後。寝室内の空気もかなり冷えています。
しかし意を決して布団から這い出し、寝巻きの上から分厚い防寒着を着込みました。
ドアを開けて外に出ると、吐く息は真っ白です。
氷のように冷えたハンドルを握って、車を走らせること5分。
富士山がよく見える山中湖畔に到着しました。
イベントのスタートまでもう少しなので、暖房が効きはじめた車内で待機します。

山中湖越しに見るイベント開幕直前の富士山
山中湖越しに見るイベント開幕直前の富士山

6時20分、日の出に伴い富士山が徐々に赤みを帯びてきました。
「紅富士」です。
初冬から早春にかけ、冠雪した富士山が朝日に照らされ、オレンジ色に染まる現象が紅富士。
山体がきれいに色づいて見えるのは、日の出から10〜20分ほどの限られた時間のみです。
一帯でひときわ高い富士山だけが朝日に染まり、まだ陽の光が届いていない周囲の低山はモノトーンのままなので、不思議なコントラスト。
眠さ寒さを我慢してきた甲斐があったと思わせてくれる、見事な光景でした。

富士山と雲だけがオレンジ色に染まる
富士山と雲だけがオレンジ色に染まる

同日午後、「ダイヤモンド富士」も見にいきました。
ダイヤモンド富士とは、沈みゆく太陽が富士山頂に重なる瞬間、まばゆく輝いて見える現象のことで、山中湖村では10月中旬から3月末にかけて見られます。
山頂部にちょうど太陽が重なるように見るためには、観測ポイントが重要。
村役場作成の、おおよその日時と場所を記したマップが役立ちますが、示されている位置情報はざっくりしていて、最終的には自分の判断で観測点を決めなければなりません。

ざっくりとしたマップ
ざっくりとしたマップ

湖畔には大勢のアマチュアカメラおじさんが、思い思いの場所に三脚を立てて準備しています。
素人の僕は、目星をつけたやり手っぽいカメラおじさんのすぐ近くに陣取りました。

2本の三脚を立て、やる気満々のカメラおじさん
2本の三脚を立て、やる気満々のカメラおじさん

午後3時30分、いよいよその瞬間が近づいてきました。
でも待てよ……。どうもこの地点からだと、太陽は山頂中央ではなく、少し左寄りの位置に沈んでいきそう。
どうやら、山頂ど真ん中に沈む太陽を見られるポイントは、もう少し先の方だったようです。
心中で「しまった」と思いつつ、僕がひそかに頼ったカメラおじさんの方を見ると、彼も「あちゃー」という顔をしています。

太陽がダイヤモンドのように輝くのはほんの一瞬。今から移動していたら、そのときを逃してしまうでしょう。
「内角いっぱい、ぎりぎりストライク!」と自分を納得させ、移動はせず、その場で待つことにしました。
そして太陽が山頂に半分くらい隠れた瞬間、四方八方にパッと光の筋が広がりました。
まさに宝石の輝きのような神秘的な光。これがダイヤモンド富士です。

この一瞬を待っていた
この一瞬を待っていた

この時期の山中湖村は、自然がもたらすダイナミックなイベントの目白押しなのです。
太陽と富士山が織りなすスペクタクルを、一日のうちに2回も鑑賞できた僕は、何かを成し遂げたような充足感に浸っていました。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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