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山の中の一軒家で、トイレが凍結して流れなかったらどうしますか?

東京生まれ、東京育ちの“シティボーイおじさん”が、山中湖畔に中古の一軒家“山の家”を購入! 妻、娘、犬とともに東京←→山梨を行き来する2拠点生活=「デュアルライフ」をはじめました。 音楽や読書など山の家での趣味活動から、仕事やお金のやりくりといった現実的な話題まで、 著者が実体験したデュアルライフのリアルを綴ります。 別荘暮らしが優雅な富裕層の特権だったのはもう過去の話。 社会環境や生活スタイルが大きく見直されている今、必読のライフエッセイです。 前回は、ダイヤモンド富士を拝み、「もしも富士山が噴火したら……」と考えを巡らせました。 今回は、寒冷地のデュアルライフ民が避けて通ることのできない、家の寒さ対策について。 冬の山の家では、来たときも帰るときも、やらなければならない“儀式”がたくさんあって……。

山の家をあとにするとき、忘れてはいけないシャットダウンの儀式

東京の家を用事で数時間ほど空けるとき、最低限の火の元と戸締まりの確認はしますが、いつもエアコンや加湿器はつけっぱなし。
防犯上の理由もあって、部屋のライトやテレビを敢えてつけたままにすることもあります。
ちょっと外出するときの家は、スクリーンセーバー起動状態のノートパソコンのようなものだと思っているからです。

でも数日間の滞在予定で、一家揃って山の家に向かう際には、家じゅうのサッシの二重ロックがかかっていることを確認し、冷蔵庫以外のすべての電化製品をオフにします。
ゴミ箱の中に腐りやすいゴミがないかチェックし、窓のカーテンをみんな閉め、ドアにもきちんと二重ロックをかけます。
ディスプレイを閉じ、ノートパソコンをスリープさせるような感じです。

では、数日間を過ごしたのちに東京の家へ戻る際、山の家の方はどうするか。
一旦山の家を離れると最低でも1週間、場合によっては数週間から1ヶ月以上も無人になります。
だからノートパソコンをシャットダウンするように、あらゆるものをきちんと片付けるようにしています。
家じゅうに掃除機をかけ、ゴミや洗濯物はまとめて車に積み込みます。
保存食や消費期限の長いもの以外は食品も片付け、すべての窓の雨戸を閉め、冷蔵庫を除く電化製品はコンセントを引き抜きます。

そして、今の季節はここからが大変。
山中湖村は寒冷地ですので、凍結による破裂を防止するため、すべての水道管から水を追い出し、代わりに空気を送り込む“水抜き”という作業をおこなわなければならないからです。
水抜きが完了したらもう一度、二階の端から順に指差し確認。
そしてドアに鍵をかけ、門にチェーンをかけて山の家をあとにします。

水抜き後、排水溝には不凍液「凍ランブルー」を流し込む
水抜き後、排水溝には不凍液「凍ランブルー」を流し込む

シャットダウンしてきた山の家は、再起動するのもなかなか大変です。
家に着いたらまず元栓を開き、家じゅうの水道を復活させます。
しかし水抜きが十分にできていなかったために水道管が部分的に凍り、なかなか水が出てこない蛇口もあります。
すると家が温まって自然に氷解するまで、数時間も待たなければなりません。

冬場に山の家へ行く際には念のため、到着前にコンビニでトイレを借りることにしています。
家のトイレの水が凍結していて、まったく流れないこともあるからです。
僕は以前、コンビニでトイレを済ますことを忘れていたためやむなく、凍てつく庭で用を足したことがあります。

オリオン座からの大三角形……。するとあれがシリウスでこっちがベテルギウスか……。
山の中で見る冬の夜空は、星が見事です。
雲の切れ間に散りばめたダイヤモンドとジンライムのようなお月様を眺めながらするソレはある種の快感でしたが、「オレはなんで自分ちの庭で立ちションを?」と、少々虚しくもなりました。

星はなんでも知っている
星はなんでも知っている

そして雨戸をすべて閉めきった家は、何日も太陽の光が入っていないため、心底冷え込んでいます。
部屋に置いた霧吹きスプレーや加湿器に残った水までカチカチ。
それどころか、キッチンの脇に置いたオリーブオイルや胡麻油まで凍っています。
北の町では野菜や果物が凍らないように、冷蔵庫に入れて保管すると聞いたことがありますが、山中湖村も事情は同じ。
冬場は食用油類も冷蔵庫に入れておかなければならないことを学びました。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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