よみタイ

CITY BOYおじさん 湖畔でデュアルライフはじめました。

秋空と御朱印とラモーンズと。女子もすなる御朱印集めをはじめたら意外な展開に

山中湖近くの神社を訪れたら、あまりにも意外な出会いが待っていた

しかし北口本宮冨士浅間神社の方々はおおらかな心をお持ちなのでしょう。特にとがめられることもなく、立派な御朱印三つが記された諸星御朱印帳は、僕の手に戻ってきました。

北口本宮冨士浅間神社でもらえる三社分の御朱印
北口本宮冨士浅間神社でもらえる三社分の御朱印

こうなったらもう初志貫徹です。
自分の趣味嗜好にはもっと自信を持つべきだと思い直した僕は、二軒目の神社へと向かいました。
山中湖からほど近い通称・山中明神、山中諏訪神社です。
国中に疫病が蔓延まんえんしていた崇神すじん天皇七年(西暦104年)、勅命ちょくめいを受けた地元民が神様をまつったというのが、山中諏訪神社の起源。
平安時代の承平しょうへい元年(西暦931年)には、山中浅間神社も併設されたので、ここでは二つの御朱印をいただくことができます。

山中湖の近くにある山中諏訪神社
山中湖の近くにある山中諏訪神社

御朱印受付には、僕と同世代に見える神職が一人で待ち受けていました。
前に並ぶ人への対応を見ていると、その方は少しぶっきらぼうで怖い印象。
「やばい、今度こそ何か言われるかも」
一度開いた僕の心はまた少し閉じかけました。
自分の順番が回ってくると、僕は諸星大二郎御朱印帳の表紙が見えないように開いて手渡しました。

受け取った神職はすぐに筆を取り、サラサラと御朱印をしたためます。
素晴らしい達筆でした。

山中諏訪神社(左写真の左ページ)と、山中浅間神社(右写真)の御朱印
山中諏訪神社(左写真の左ページ)と、山中浅間神社(右写真)の御朱印

そして彼は僕に返す前、帳面を閉じて表紙にさっと目をやりました。
お? という感じで少し動きが止まるのがわかり、僕は心の中で「やべ」と思いました。しかし神職は目をきらりと光らせ、意外な言葉を発したのです。
「これ、諸星大二郎先生ですよね。へえー、すごい! こんなの、あるんすね!?」
意表をつかれた僕は、「え? ええ、そうなんですそうなんです。展覧会で買ったんです」と答えました。

神職は「すごいな」と繰り返しながら御朱印帳を返すと、次に僕の着ていたTシャツに目を留めました。

こんなTシャツを着てたのです
こんなTシャツを着てたのです

「ラモーンズじゃないすか。俺、好きなんですよ。その写真、CBGBのライブですか?」
この瞬間、僕の心の扉は全開になりました。
「古着で買ったんですけど、1978年のラモーンズCBGBライブのTシャツです。怪我したデッド・ボーイズのメンバーを支援するために開いたライブのときのですね」
いささかマニアックな話であるにもかかわらず、神職はすかさず、
「デッド・ボーイズの、スティーブ・ベイター?」
と聞いてきます。
ええ、そこまで知ってるの? と驚きつつ「いや、怪我したのはドラマーのジョニー・ブリッツです」と答える僕。
まさかこんなところで、メッチャ話の通じる友達を見つけるとは。

なんだか嬉しくなって記念写真
なんだか嬉しくなって記念写真

別れ際、神職は「じゃあ、是非また来てください」と、神社の人とは思えない言葉で見送ってくれました。

そりゃ、そうだ。
いくら神社の家に生まれた(のかどうかは知りませんが)からといって、いつも御神楽おかぐら雅楽ががくを聞き、足袋・袴で過ごしているわけはありません。
諸星大二郎ファンで、ラモーンズやデッド・ボーイズが好きなパンクス神職がいても、全然おかしくはないのです。
そんな当たり前のことに気づき、「やっぱサブカルは共通言語だな」と嬉しくなった僕は、カーステレオで大音量の『Blitzkrieg Bop』byラモーンズを聴きながら、山の家に帰ったのでした。

サブカル臭強めな山の家の神棚(に見立てた窓のカーテンボックス)
サブカル臭強めな山の家の神棚(に見立てた窓のカーテンボックス)

連載初回「東京で生まれ東京に骨を埋めると思っていた僕が、デュアルライフを選んだ理由」はこちらから
本連載は隔週更新です。次回は10/27(水)公開予定。どうぞお楽しみに!

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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