よみタイ

CITY BOYおじさん 湖畔でデュアルライフはじめました。

秋空と御朱印とラモーンズと。女子もすなる御朱印集めをはじめたら意外な展開に

「果たしてこれはアリなのか?」と買ってから気づいた諸星大二郎の御朱印帳

昔から神社仏閣を訪ねるのは嫌いではなかったのですが、御朱印を集めようと思ったことはありませんでした。
いや正確に言えば5〜6年前に一度、少しかじったことはあります。でも二つ集めただけで途絶えてしまいました。
そんな飽きっぽい性格の僕が、再び御朱印集めを開始しようとしたのには理由がありました。
とてもナイスな御朱印帳をゲットしたからです。

9月某日、東京の三鷹市美術ギャラリーで開催されていた「諸星大二郎展 異界への扉」を見てきました。

僕は、『妖怪ハンター』『西遊妖猿伝さいゆうようえんでん』『マッドメン』などの作品で知られる大御所漫画家、諸星大二郎のファンなのです。
古史・古伝を題材にすることが多い氏直筆の、細密なタッチの展示作品の数々は当然ながら素晴らしいものでした。グッズ売り場も充実していて、僕は気持ちをたかぶらせながら、そこでしか買えないレアな諸星グッズを物色しました。
そして、この御朱印帳を見つけたのです。

表紙は清代中国の幻想小説集『聊齋志異りょうさいしい』を意識して描いた短編コミック集「諸怪志異しょかいしい」シリーズ単行本第一巻『異界録』のカバー絵が施されています。
一目惚れした僕はさっそく買い求め、ここに御朱印を集めようと思い立ちました。

諸星大二郎の御朱印帳
諸星大二郎の御朱印帳

北口本宮冨士浅間神社には、メインの冨士浅間神社のほか、摂社せっしゃである諏訪神社、そして先述の神社発祥地である大塚丘の三社が立っているため、三つの御朱印をいただくことができます。
お宮に参拝したのち、僕は意気揚々と窓口に「お願いします」と御朱印帳を差し出しました。
そしてそのとき、自分の浅はかさに気づきました。

北口本宮冨士浅間神社の大鳥居と参道
北口本宮冨士浅間神社の大鳥居と参道

魔物が潜む森の小道を、提灯ちょうちんをぶら下げて歩く昔の中国の童子どうじが描かれたその表紙を、受付の神職しんしょくが一瞬「なんじゃこりゃ?」という目つきで見たのを、僕は見逃しませんでした。
誰の目も気にしない豪放磊落ごうほうらいらくなマッチョメンに憧れることもありますが、実際の僕は、自分の息子と言ってもいい年のコンビニバイト青年にさえ小さな声で、「あ、あ、あの、137番のタバコ2つください」としか言えない小心者。
人の目はいつも大いに気になる性質たちなので、極力、場違いな言動は避けるようにして生きている元パンクス小市民です。
僕のほかにも御朱印を求める人が前後に並んでいたので、0.5秒の早技でチェックすると、他の人の御朱印帳は和柄の布表紙などが施された、まともなものばかりです。

御朱印は観光地のスタンプなどと違い、神域しんいきに仕える人が心を込めてしたためてくれる参拝の証であり、お守りと同様、神様の分身として大事にしなければならないありがたいものであることは理解しています。
そんなものを集める帳面として、妖怪ノートはちょっとまずかったかな……。
僕の御朱印帳を見て、「やだ、何あれ? クスクスクス」と笑う、うしろの御朱印女子の心の声を聞きながら、僕は少し冷や汗をかき、身を縮めていました。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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