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「俺の知ったこっちゃないから責任は自分で取ってくれ」と語る、ザ・スタークラブHIKAGEとファンの関係

ファンとともに年をとったシーン最重鎮のHIKAGEが思っている今後の在り方

 1977年に走りはじめてから、HIKAGE率いるザ・スタークラブは一度も立ち止まったことがない。音源は毎年何枚もリリースされ、オリジナルアルバムだけ数えても通算35枚。マキシシングルを含むシングルを合わせると、通算50枚以上ものリリース数を誇る。ツアーで全国を駆け巡り、今も年間数十本のライブをこなす。
 どうしてそんなことができるのかと尋ねても、HIKAGEは「慣れだ」とか「ただ作るのが好きだから」とそっけない答えを返すばかりだが、こんなことも語った。
 
「曲はいつも、作り出してから後悔するんです。最初に自分の頭の中にある時点で、ある意味、完成形だから。100点満点で、オリコンの1位が取れるレベルなんです(笑)。だけどそれを現実に作っていくと、どんどん点数が下がっていく。最初のイメージとずれてくることもあるし、技術的にできる範囲もあるからね。自分の歌もそうなんだけど、楽器は他人がやっているから、どうしても思い通りにはいかない。それで、リリースする時点では『出したくないな……』と思うほど後悔しています(笑)。
 でも、だからまたできるんですよ。絶対に満足できないから。100点満点のまま完成しちゃったら、そこで終わりなのかもしれない」

 ライブも同じなのかと聞くと、それはまた別のモチベーションに支えられているという答えだった。

「ライブは体力勝負ですが、本当に反復運動みたいなものなんで、常にやっている限りは続けられる。だから、もし1年も休んだらそのほうがヤバいと思います。ただし良いライブをやったあとは、まったく体力が減っていないんです。演奏がダメだった日は、無駄な力をすごく使っているので、疲れ切っているということはありますね」

「絶対に満足できない。100点満点のまま完成しちゃったら、そこで終わりなのかもしれない」(撮影/木村琢也)
「絶対に満足できない。100点満点のまま完成しちゃったら、そこで終わりなのかもしれない」(撮影/木村琢也)

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――スタークラブはファンも50代が多いと思いますが、みんないまだに元気にダイブしたりしてますよね。

「自分もいい歳なんで、ファンが歳を取っていることに違和感はありません。でもダイビングとかは、『大丈夫かよ?』って思うんですよ。ライブハウスだから、警備の人がたくさんいる状況ではないし、気持ちはわかるけど『なんでそんなに無理するんだ』と心配になります。ファンのことなんてまったく気にしてないバンドもいるとは思うんだけど、俺は距離を取りながらもファンのことはいつも気にしてるから」

――HIKAGEさんが自分のやり方でファン大事にしてる感じ、よく分かります。

「今のスタークラブがあるのは、良くも悪くもファンのおかげなんでね。パンクスなんて、社会的に適合しない人もいっぱいいるけど、そういうファンも俺は否定しない。ある意味、そういうファンのせいで、スタークラブには怖いイメージがついているということもあるんだけど、逆にそのイメージのおかげで、俺たちはまだやれているということもすごく感じるんです」

――僕も54歳ですが、スタークラブのライブに行くと、どうしても最前列を目指してしまいます。

「けがしませんか? 気をつけて」

――ありがとうございます。大丈夫です(笑)。僕らにとってはスタークラブがパンクの初期衝動みたいなものですから、無理はしないけど『この曲がはじまったら、後ろで腕組んで聴いているわけにはいかない』と、一瞬で10代の気持ちになるんですよ。

「それがあるからね、パンクやロックは。浸っちゃうんだよね。俺はここ10年ぐらいずっと、周りの仲がいいボーカリストたちと、親父と呼ばれる世代が楽しめる場所をつくらなきゃダメだよなって話をよくするんです。ただライブをやるだけでは、ファンはいずれ来たくても来れなくなるから、もっと楽しめるようにつくり上げなきゃダメだと思うんですけど、これがなかなか難しいんですよ。例えば、ただのライブだけじゃなくてクラブ形式でやったり、いろいろな遊びの要素があった方が来やすくなるんじゃないかとか。
 突発的なイベントでそういうのをやるんじゃなくて、月に2~3回とか定期的にあると、その人たちの居場所になるでしょ。客も体力勝負を強いられるライブだけではなく、いろんな形でパンクやロックの世界にいられるようにできれば、いくつになっても足を向けやすいんじゃないかなと思ったりするんですよ」

 良い面ばかりではなく、パイオニアとしての苦労や悩み、そして行く末も多く語ってくれた今回のHIKAGEインタビュー。色々と考えさせられるものだった。
 冗談めかして、「俺はリーダー向きじゃないんだ」「(遠藤)ミチロウさんが生きてくれてたら」などと語るHIKAGEだが、日本のパンクシーン、いや、ストリートロック界の最重鎮として、見事な生き様を示している人だなと、改めて思うのだった。

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 この項、終わり。次回のゲストもお楽しみに!

【プロフィール】
ヒカゲ/1959年生まれ、愛知県名古屋市出身。
1977年、名古屋でHIKAGEを中心に結成したザ・スタークラブのヴォーカル。
現メンバーは、HIKAGE(ヴォーカル)、TORUxxx (ギター)、HIROSHI(ベース)、MASA(ドラムス)。
1977年、名古屋でHIKAGEを中心に結成。後のインディーズ・ブームに先駆けて1980年1stミニ・アルバム発表。1984年、徳間ジャパンからメジャー・デビューするまでインディーズ・チャートを独走する。
1986年、ビクターへ移籍後、2003年にスピード・スター・ミュージック、
2004年にクラブ・ザ・スター・レコーズ、そしてノートレスとレーベルを移しながら、年ごとの新作発表及び全国ツアーと絶え間ない展開を現在まで続けている。
2023年、バンド結成47年目を迎える今も、止まる事なく走り続ける、唯一無比の日本のパンク・ロック・バンド。

公式X(旧ツイッター):@thestarclub
公式HP:ザ・スタークラブ公式HP

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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