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ラフィンノーズのチャーミーは“ファッションパンク”の鏡。全財産を注ぎ込むほどのめり込んだブランドとは?

セルジュ・ゲンズブールとエディ・スリマン。フランスの伊達男に憧れる

 チャーミーの62歳の誕生日に行なった今回のロングインタビュー。話題は徐々にファッションのことへ移っていった。
 チャーミーに、最近よく聞いている音楽について尋ねると、こんな答えが返ってきたのだ。

「音楽は俺、古いのも新しいのも何でも聴くからなあ。最近、一番よく聴いているのは、ロキシー・ミュージックとかかも。あと好きなのは……、ゲンズブールかな。
ゲンズブールが生前暮らしていた家を、娘のシャルロットが記念館にしたらしくて、もうすぐ一般公開されるんです。それを見に、フランスへ行きたくてしょうがない。コロナも明けて海外に行きやすくなったから、近いうちに行くつもりですよ。ゲンズブールは音楽だけではなくて、ファッションもめっちゃ意識してます」

 セルジュ・ゲンズブールという意外な人物名が出てきたが、僕はここで大きく頷いた。なぜなら、今日のチャーミーの私服のいでたちは、確かに、かつてフランスきっての伊達男としてその名を轟かせた歌手(作詞家、作曲家、映画監督、俳優の顔も持つ多才の人)、セルジュ・ゲンズブールのそれを彷彿とさせるものだったからだ。

「ゲンズブールを意識した今日の服は、上から下まで全部セリーヌ。セリーヌのデザイナー、エディ・スリマンの服が大好きなんですよ。
 韓国のミュージックシーンにハマったあと、次に出会ったのがエディで、結構な金を使いました(笑)。俺の家のクローゼットの扉を開けると、中は全部エディの服です。他は全部捨てちゃったから。エディはイヴ・サン=ローランやディオール・オムのデザイナーもやっていたけど、今のセリーヌ期の服が、俺は一番好きです」

全身エディ・スリマンのセリーヌの私服コーデ。62歳、簡単に着こなせるものではない。(撮影/木村琢也)
全身エディ・スリマンのセリーヌの私服コーデ。62歳、簡単に着こなせるものではない。(撮影/木村琢也)

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 ファッションの話をしているチャーミーは、生き生きとしている。
 ラフィンノーズというバンドは、ベースのポンも昔からファッションにこだわりがある男として有名で、彼らのビジュアルの良さやファッションセンスの高さもバンド人気の一要素であったことは間違いない。
“ファッションパンク”という言葉もある。主義主張や精神性が重んじられる傾向のあるパンク業界の中で、ビジュアルだけにこだわった中身のないパンクスを揶揄する言葉だ。
 だがかつてある雑誌のインタビューで、チャーミーはこう断じている。
「俺はファッション命。“ファッションパンク”なんて悪口言っているやつに限って、ダサい格好してんねん。おしゃれ? 俺らってそこやん。そこのみかも(笑)」

 ここ数年どっぷりと入れ込んでいるエディ・スリマンについて、チャーミーは饒舌に語り続けた。

「今やセリーヌのお店に行くと、『あらあら本当に、小山さん、いつもありがとうございます』って言われるほどになった(笑)。でもお礼を言いたいのはこっちの方で、なかなか俺にぴったりな服ってないのに、エディのおかげで、今でも俺はかっこつけられる。エディの洋服を着ている人はいっぱいいるけど、ちょっと不良が着て気取っているのが一番かっこいいんですよ。じゃあ、俺やろと(笑)」

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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