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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

男がつい不要不急のカラビナを買ってしまう理由

自分だけの異常行動でも異常性癖でもないと思うんだけど、なんだかすごくカラビナが好きだ。

アウトドアショップやホームセンターへ行くと、目的の物そっちのけでカラビナ売り場に吸い寄せられていることがある。
様々な形や大きさのカラビナを端から吟味し、これだと思う一本を握っていつの間にかレジへ……。正直、その間の記憶は曖昧だ。
一本また一本と増えていったカラビナが、家の中には大量に存在している。多分、一生カラビナには困らないはずだ。

我々グリズリー世代が子供の頃、カラビナというものはなかった。
正確に言えば、登山の世界や工事現場では昔から普通に使われてきたものだけど、一般人の日常の道具ではなかったのだ。
それがいつの頃からか、山登りや工事以外にも様々な用途で使われるようになった。本物の実用品ゆえの、プロスペックな機能美が男心をくすぐり、ここまで普及したのだと思う。

シンプルゆえの汎用性が、カラビナの最大の魅力なのだ

汎用性のあるカラビナはとても便利な道具だ。
僕の場合、鍵束をズボンのベルトループにひっかけるのが基本の使用法。車に乗るときには小さなカラビナで車のリモコンキーを追加する。
犬の散歩のときは、ペットボトルやビニール袋などのウンチグッズをカラビナで伸縮リードにぶら下げる。
自分が飲むためのペットボトルも、カラビナでリュックのストラップにぶら下げる。

ダイヤル式のカギ付きカラビナも便利。自転車に乗るときや旅行のときはこれを一本携えていく。

マジ登山用の太いカラビナは、スーパーでまとまった買い物をするときに持っていく。手に食い込む重いレジ袋の持ち手にカラビナを引っかけ、ハンドルがわりにするのだ。

数あるマイカラビナの中で、一番のお気に入りは、工業製品然としたシンプルで無骨な一本。ステンレス製でメーカー名の記載はなく、「PK-5SUS」とロットナンバーらしきものだけが刻印されている。
この渋さ、わかっていただけるだろうか。

一生分のカラビナを持っているけど、またホームセンターかアウトドアショップに行ったら、いつの間にかカラビナコーナーの前に立っているのだろう。

便利な使い方をあれこれと考えながら、最高のカラビナを見つけ出すのは、大人の男の極めて小規模な楽しみなのである。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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