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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

もしかしたら、過去イチのサンダルを見つけてしまったかもしれないという話

ついに究極のサンダルを見つけてしまった。

Dannerのリカバリーサンダル、「ミズグモ フリップ」である。
ここ一ヶ月ずっと履いていて、もはやこれなしの生活はできなくなっている。
「水の上に立っているかのような快適性を体感できる新感覚」という謳い文句だけあって、その履き心地たるやサンダルの固定概念を覆すほどだ。

数年前から徐々に注目を浴びつつあったリカバリーサンダルに興味は持っていた。でも、もっと前からあった“シャワーサンダル”や“マッサージサンダル”と呼ばれる、アフタースポーツ用サンダルとの違いがわからず、なんとなく乗り遅れていた。

しかし履いてみたら一瞬ではっきりわかった。
従来のサンダルと比べてクッション性がはるかに優れて、どんなスニーカーよりも、また裸足でいるよりもずっと快適なのだ。

「ミズグモ フリップ」はアウトドアブーツで知られるDannerが開発したものなので、トレッキング後の疲れた足を回復させる目的のサンダル。でも僕は山なんか全然登らないけど、あまりに気持ちいいので、年がら年中履くようになってしまった。

サンダル履きはアンチファッションのストリートスタイルだった

本コラムでサンダルについて書くのは2回目だ。こだわるのにはちょっとした理由がある。ストリートスタイルにおけるサンダル履きは、実は長い歴史と深い意味があるのだ。

いつもサンダル履きの人といえば、古くは『男はつらいよ』の寅さん(雪駄だけど)、『こち亀』の両さん(便所サンダルだけど)、Facebookのマーク・ザッカーバーグなど、憎めないアンチヒーローが思い浮かぶ。

歴史をひもとくと、サンダルを日常のワードローブとしたのは、1950年代中頃のアメリカ・ニューヨークのグリニッチビレッジやカリフォルニアのバークレーに集った、ビートジェネレーションの若者が最初だったと言われている。

ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズといった文学者が先導したビートは、薄汚れた現代社会を否定し、アメリカ開拓時代の純粋なフロンティアスピリッツに回帰することを根本理念とする思想だった。
彼らは伝統社会への軽蔑と離脱を表現するため、ファッションに対してはあえて無関心・無頓着を装う。そして自由であることの表現として屋外を裸足で歩くことを好み、サンダル履きの者が多かった。ビートの思想はその後の1960年代に花開くヒッピーに受け継がれたため、彼らもまたサンダル履きが多かった。

このあたり、かなりかいつまんで説明しているので、詳しく知りたい方は拙著『ストリート・トラッド』をぜひご購読ください。

寅さんや両さん、そしてFacebookもまたビートやヒッピーの思想につながっているのでは? という説を展開するに、このコラムのスペースはあまりに小さすぎる。
とにかく一言で言えば、サンダルとはFREEDOM! なのである。

裸足よりも快適なリカバリーサンダル。
履くだけで心も体も解放された気分になるから、騙されたと思って一度履いてみることを強くオススメしたい。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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