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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

マッチの脇毛とネーナの脇毛から、大人の男の体毛問題について考えた

1980年代にふたつの脇毛事件があった。
“マッチ事件”と“ネーナ事件”だ。

……ここでピンとくる人にとっては、この先に書いてあることはだいたい予想通り、ということはあらかじめお断りしておきたい。

ときは1980年代初頭。テレビの“オールスター水泳大会”が夏の風物詩で、錚々たる面子のアイドルたちが大磯ロングビーチに集って水着でワーキャーと競い合い、全国のお茶の間の視線を釘付けにしていた。いい時代だったな。
いまと変わらず、男性陣のメインにはタノキンを中心とするジャニーズ勢がいた。
特に男らしくてダンスもうまく、スポーツ万能のマッチこと近藤真彦は、プールでも八面六臂の大活躍だった。

競泳では他を抑えてぶっちぎりでゴールし、右手を高く突き上げたマッチ。だが、その脇ときたら……、ツルッツルのノー脇毛だったのだ。翌日の学校では、女子を中心にマッチの脇の下について熱く語られることとなった。
まったく、いい時代だったぜ。

当時、どちらかというと男は生えるべきところにはしっかりと生えていた方がいいという風潮があった。それなのに全体的に体毛が薄く、脇ツルツルのマッチは、残念な感じで捉えられた。
あんなにかっこいいマッチなのに、毛が生えていないなんて……と。
男子は男子で、完璧なアイドルのわずかな欠点を見た感じがして、少しホッとしていたり。

いまの子が聞いたら驚くだろう。いまの多くの若い男子は、体毛なんてない方がいいと思っているのだから。実際、体毛やヒゲの永久脱毛も流行っている。ええー、男なのに⁉︎ と思うのはおっさんの証拠だろう。

結論。大人の男の体毛なんて、ど〜でもいいのではなかろうか

もう一方のネーナ事件は、マッチ事件の数年後に起きた。ドイツの歌姫、ネーナが1983年にリリースしたシングル「ロックバルーンは99(99 Luftballons)」は、世界的にスマッシュヒット。僕もリアルタイムで、ベストヒットUSAかなんかでそのミュージックビデオだったかスタジオライブだったかを観ていた。

可愛く歌い踊るネーナは、曲の最後の方で高々と腕を上げるのだが、その脇の下には立派な脇毛が……。
あのときの驚きは相当なものだった。のちに同年代の人と話すと大きく頷いてもらえることが多いから、日本全国津々浦々に衝撃が走ったことは間違いない。

女性の脇毛についてもうちょっと考えてみると、さかのぼって1960年代、ウーマンリブの時代には、身体的抑圧性に疑問を抱いた女性が脇毛の処理を拒否。ヒッピー女性にもボーボーの人が多かったらしい。ネーナは1960年生まれだからヒッピー世代ではないけど、あの脇毛はどういう思想の表現だったのかな? 

そして今の若い男子が体毛を嫌うのは、ウーマンリブのまったく裏返しのようでなかなか面白い。どんどん脇道にそれていくので、話をグリズリー世代の体毛問題に移しましょう。

僕個人に関していえば、完全にマッチ系なのだ。脇毛はピロピロすね毛もヒョロヒョロ、胸毛は皆無で腕や太ももはスルスルだ。昔はこれがコンプレックスだったのに、今は大いばり。いい時代になったもんだ。

でもヒゲはしっかりとある。体毛が濃いのは縄文系の血、薄いのは弥生系と言われるから、僕は、顔は縄文系で首から下は弥生系なのかもしれない。
グリズリー世代は、体毛が濃くても今の若者みたいに悩むこともないと思うし、薄すぎる僕は僕で「やっと俺の時代が来た」と満足している。

まあ、どうでもいい話だよね。
長くなりましたが結論を言うと、そもそも男の体毛なんて、ど〜でもいいって話です

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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