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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ステイホーム生活ではかどる家の整理。80年代のソノシートを発掘!

巣ごもり生活を続けているとやることも尽きてきて、家の中のアンタッチャブルゾーンの開拓・開帳・整理が進む。

今回、我が家の“開かずの棚”から掘り出したのはソノシートだ。
ソノシートとは、ペラペラの極薄ビニールレコードのこと。
手軽な記録媒体として1960年代から普及し、かつては子供向け雑誌付録などにもよく使われた。

僕が捨てずにずっと持っていたのは、1980年代日本のインディーズブームの頃のもの。
メジャーレコード会社からは見向きもされないバンド、あるいは諸事情から敬遠されたバンドが自主的に制作していたソノシートだ。

いまのようなオンライン配信もYouTubeもなかったその時代、貧乏なインディーズバンドが自分たちの音楽を世に発表したいと思ったとき、もっとも低い原価で制作できるのがソノシート。
バンドをはじめたら、まずソノシートづくりを目指すのが当時のインディーズバンドのセオリーだった。

言ってみればまあ、完全な昭和遺産です。

ソノシートはまったく劣化しておらず、青春の音がフツフツと鳴り出した

当時、ソノシートというのは耐久性に乏しいとされていた。
ちゃんと保管していてもいずれ劣化してしまうので、なるべく早くダビングし、音だけサルベージしておいた方がいいと言われていた。

確かにペラペラのソノシートはいかにも脆弱に見えたけど、デジタル化したりするのも億劫なのでやらなかった。
でも、我が青春の1ページなので捨てるに捨てられず、ずっと家の奥底にしまいこんで、なかったものとしていたのだ。

発掘したのはいずれも高校時代以前に買ったものなので、すでに30年以上が経過している。
こりゃダメかもな〜と思いつつ、プレーヤーに置いて恐る恐る針を落としてみると……。
意外や意外、とてもクリアな青春の音がフツフツと鳴り出した。

需要はあまりないと見たので、掘り出したソノシート一枚一枚について深くは言及しないけど、見る人が見ればわかる貴重盤があるんだからね!
と、急に鼻息を荒くしても虚しいだけだが、ラフィンとかグールとか木魚とか、本当に懐かしいったらありゃしない。
そして今聴いても、めちゃくちゃかっこいい。

巣ごもり生活も悪くないな。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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