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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ドクターマーチン〜ストリート“アンチスタイル”の最右翼ブーツ

ロック好きにはありがちだが、ブーツが大好物だ。

特に、この連載のバナーや拙著『ストリート・トラッド』の表紙にもしたドクターマーチンの8ホールブーツ「1460」、それもチェリーレッド(赤茶)は最高だと思っている。
ドクターマーチンの最初期モデルである「1460」チェリーレッドは、僕の好きなカルチャーである1960年代のスキンヘッズが見出したアイテムだ。

僕は大学生になってすぐ、バイト代をはたいて1460を買い、嬉しくて毎日履いていた。
一年生のときの語学クラスは、イギリス人の嫌味な初老男が講師をしていた。仮にミスター・ジェイコブとしておこう。ジェイコブはある日、僕に「summerなのにyouはどうしてeverydayそんなstrangeなbootsをput onしている? Why?」と聞いてきた。
僕が「It’s rock style」的な答えをすると、ジェイコブに「Ha!」と鼻で笑われ、すごく頭にきた。

いま思えば、いかにもお堅い英国紳士風のジェイコブにとって、スキンヘッズやパンクスの履物であるマーチンのブーツは、バカな若者のくだらないファッションに思えて嫌いだったのかもしれない。

似非ジェントルマンだった英国人講師とドクターマーチンブーム

でもそんなジェイコブは後年、大学に無断で学生から金を集めて自宅でサマースクールを開いたり、何人もの女子学生を口説いていたりしたことが発覚してクビになった。
あいつ、ちっともジェントルマンじゃなかったのだ。

なんだかどうでもいいことを思い出してしまった。
兎にも角にも僕は、自分にとって最良のブーツであるドクターマーチン「1460」チェリーレッドをその後もずっと履き続け、現在は三代目と四代目を所有している。

昨今、ドクターマーチンは空前のブーム。街で履いている若い子を見かけることも多い。
彼らの履き方やコーディネートを見るにつけ、ちょっとひとこと言いたくなることもあるのだが、もちろん黙って温かい目で見守る。

ドクターマーチンなんて、ストリート“アンチスタイル”の最右翼だ。
その時代の若者が独自の解釈で、自由に履けばいいに決まっているのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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