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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

シカゴ音響派を代表する人物、アーチャー・プレウィットとは!?

アーチャー・プレウィットというアーティストをご存知だろうか? 

Archer Prewittという綴りだが、日本語表記はメディアによって、アーチャー・プルウィットやアーチャー・プレヴィットなど揺れがある。
日本語表記がいまいち定まっていないのは、日本ではあまりメジャーな存在ではないということの証なのかもしれない。

アーチャー・プレウィットは、1963年生まれのアメリカ・シカゴを拠点とするミュージシャン。
1990年代半ばに成立した“シカゴ音響派”というオルタナティヴロックの一ジャンルの中心人物であり、ザ・シー・アンド・ケイクというバンドのメンバーとして現在も活動中だ。

シカゴ音響派というのは、ジャズや現代音楽、ノイズなどを内包したポストロックで、1990年に結成されたトータスというバンドが元祖的な存在。
物憂げな美しいラウンジサウンドを特徴としていて、僕はその耳あたりのよさが大好きなのだ。

ご存知なかったという方でシカゴ音響派に興味のある向きは、まずトータスとザ・シー・アンド・ケイクを聴いてみることをおすすめする。
狭い世界でまとまったジャンルなので、引き込まれた方はさらに、その2バンドに関連する人やバンドをたどっていけばいい。

ザ・シー・アンド・ケイクのメンバーであるサム・プレコップとアーチャー・プレウィットのソロ作品。
ザ・シー・アンド・ケイク以前にアーチャー・プレウィットが組んでいたザ・カクテルズ。
ザ・シー・アンド・ケイクの結成に参加するサム・プレコップとエリック・クラリッジがメンバーだったシュリンプ・ボート。
彼らと関わりの深いミュージシャン/プロデューサーのジム・オルーク。
シカゴではなくケンタッキーのバンドだが、ジム・オルークや後にトータスに参加するバンディ・K・ブラウンが在籍したガスター・デル・ソル。
まずはこのあたりを押さえればいいのではないかと思う。

すみません。ややこしいですね。このへんにしておきます。

音楽からファンになる人が多いが、多才な彼のコミックや絵画も最高

ザ・シー・アンド・ケイクではギター・ボーカル・ピアノを担当するアーチャー・プレウィットは多才な人で、コミック作家兼画家としても活動している。

コミックは、2000年代中頃に(当時)ザ・ハイロウズの甲本ヒロトやアーティストの奈良美智が激賞したことから、日本でも一時的にバズった「ソフボーイ(SOF’BOY)」が代表作。

ソフボーイはアメリカの薄汚い路地裏でホームレス生活をする白くヘンテコな生物で、ローラーで轢かれたり銃でハチの巣にされたり、酔っ払いにゲロまみれにされたりと、いつも目を覆いたくなるような悲惨な目にあう。
それをヘラヘラと笑いながら受け流す、不死身で不気味なキャラなのだ。
子供なんかには決して見せられないひどい内容だが、カラフルなアメコミタッチで描かれる「ソフボーイ」はなぜかすごく魅力的で、ファンも多い作品である。

僕は音楽からアーチャー・プレウィットを知ったが、彼の描く絵のファンにもなった。
数年前におこなわれたトータスの来日公演では、彼が描いた絵をプリントしたバンドTが売られていたので、迷わずゲット。
お気に入りTシャツとして頻繁に袖を通している。

また、彼が描いた画をベースに起こした、伝説的ミュージシャンのフィギュアがときどき思い出したように発売される。
そんなに大々的に販売される代物ではないので、うっかりしていると見逃してしまうのだが、僕はレゲエミュージシャンのリー・ペリーとNYハードコアパンクバンド、バッド・ブレインズのボーカリストであるH.R.のフィギュアを持っていて、部屋の中の一等地に飾っている。
もともと好きなミュージシャンの姿が、敬愛するアーチャー・プレウィットのフィルターを通してフィギュア化されているのだから、僕にとっては堪らん逸品なのだ。

いろいろと説明が難しくて、興味のない人にはまったく面倒臭いだけのコラムになっていると思うが、どうかご勘弁ください。
興味のない人は三行目くらいで読むのをやめているだろうから、気にしなくてもいいのかな。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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