そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2020.2.28
カメラ・トーク〜あるフィルムカメラがどうしても手放せない理由
デジカメネイティブなおしゃれ女子の間で、いにしえのフィルムカメラが流行っているという話をチョイチョイ耳にするけど、あれは本当なのかしら?
年頃のおしゃれ女子とあまり接触する機会もないからよく分からない。
でも先日、不倫で話題になった唐田なにがしという女子が、相手の東出なにがしの写真をたびたびインスタにアップして匂わせていたという話題で引用されていた写真は、フィルムカメラで撮影したものだった。
やはり流行ってんだな。
こんなことで確認するなんて、本当におっさんだなあと思うけど。
自称ストリートおしゃれおじさんの僕は、今でもよくフィルムカメラを使っている。
もともとフィルムカメラをバリバリに使っていた世代だから、何も意外性はないのだが。
昔、何台も持っていたフィルムカメラはほぼ中古屋に売ってしまったが、手放さずに今でも現役で使っているのは、フジフイルムが2005年に発売した「ナチュラブラックF1.9」だ。
24mmという人間の肉眼に近い超広角レンズと、コンパクトカメラとしては異質のF1.9という明るいレンズを搭載したこのカメラ。
業界では既にデジカメが主役の座を奪いつつあった頃、フィルムメーカーの意地でつくったような意欲作だったので、発売当初から注目されていた機種ではあった。
でもハイエンドユーザー向けではなく、一般層狙いだったので3万円前後という手頃な価格がつけられていたので、僕もそんなに気負うことなく、へえ、面白いスペックのカメラだなと気軽に買ったことを覚えている。

高感度フィルムと明るいレンズが生み出す天国のように綺麗な写真
しかし実際に使ってみると、このカメラで撮った写真がものすごく良いのだ。
特に、最大の売りである明るいレンズを活かすため、同時発売されたISO1600という超高感度フィルムを使うと、天国のような温かみのある写真が撮れた。
僕がこのカメラをずっと手放さずにいたのは、この魅力ある写真のためだった。
ところが2018年にISO1600フィルムは生産中止に。現在、一般的に手に入れられるもっとも高感度のフィルムはISO800となっている。
たいへん残念なのだが、まあISO800フィルムでも、デジカメではどう加工しても出せない味のある写真は撮れるから、納得するしかない。
そしてこちらのカメラ、現在の中古市場での価格は10万円前後。新品の頃を大きく上回るプレミア価格で取り引きされている。
マニアの間にはこのカメラの魅力がよく浸透しているという証である。
まあひとつ、ナチュラブラックF1.9で撮影した作例をご覧ください。
いくら儲かりそうだとわかっていても、僕がこのカメラを決して手放さない理由が分かってもらえるかもしれない。

